相沢さん
四不足
貧不足羞、可羞是貧而無志。 貧は羞(は)ずるに足らず、羞ずべきはこれ貧にして志無きなり。
賎不足悪、可悪是賎而無能。 賎は悪(にく)むに足らず、悪むべきはこれ賎にして能無きなり。
老不足嘆、可嘆是老而虚生。 老は嘆くに足らず、嘆くべきはこれ老にして虚生することなり。
死不足悲、可悲是死而無補。 死は悲しむに足らず、悲しむべきはこれ死して補う無きなり。
貧乏そのものは恥ずかしいことではない。恥ずかしいのは、貧乏な上にこころざしも無いという場合である。
卑賎そのものはにくむべきことではない。にくむべきなのは、卑賎な上に得意なことも無いという場合である。
老衰そのものは歎くべきことではない。歎くべきは、老衰した上に生きることに意義を見出しえない場合である。
死そのものは悲しむべきことではない。悲しむべきは、死ぬことによってこの世に何の役にも立てない場合である。
貧乏になったり卑賎になったり老衰したり死亡したりすることはできるかも知れませんが、志を持ったり能を有したり虚生せず補するところある、というのは、いずれもわたしどもにはむつかしいことばかりです。よって我らは羞ずべく、悪むべく、嘆くべく、悲しむしかないのでしょう。
五可不可
懶可臥、不可風。 懶(らん)には臥すべく、風すべからず。
静可坐、不可思。 静には坐すべく、思うべからず。
悶可対、不可独。 悶には対すべく、独りすべからず。
労可酒、不可食。 労には酒すべく、食らうべからず。
酔可睡、不可淫。 酔には睡るべく、淫すべからず。
けだるいときには寝てしまうのがよく、風に当たってふらふらしていてはいかんぞ。
静かなときには座禅を組んでいるのがよく、いろいろ考えこんではいかんぞ。
こころに悶えあるときにはひとと語りあうのがよく、ひとりでいてはいかんぞ。
体が疲れたときにはお酒を汲むのがよく、ただ食うだけではいかんぞ。
酔うたときには眠ってしまうのがよく、エッチなことをしてはいかんぞ。
これは最後の一つを除いて、全部不可の方ですな。
十要
身要厳重、 身は厳重なるを要し、
意要閑定、 意は閑定なるを要し、
色要温雅、 色は温雅なるを要し、
気要和平、 気は和平なるを要し、
語要簡徐、 語は簡徐なるを要し、
心要光明、 心は光明なるを要し、
量要闊大、 量は闊大なるを要し、
志要果毅、 志は果毅なるを要し、
機要縝密、 機には縝密なるを要し、
事要妥当。 事には妥当なるを要す。
行動は厳かで重々しくあるように。
意識はのどかで安定しているように。
顔つきはあたたかみがあり、みやびであるように。
気分は和やかで平穏であるように。
言葉づかいは簡潔でゆっくりしているように。
心ばえは明朗で輝かしくあるように。
度量は広く大きくあるように。
志は果断で毅然たるものであるように。
機会を見つけるときには慎重でじっくりと。
事柄を解決するときには適切で正しい判断を。
ひゃあ、これは難しいことだらけです。もうあきらめます。
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いずれも「小窗幽記」(「小窓幽記」)巻一より。
「志を高く持ってしっかり進んでいこう」という趣旨の格言等を探しているのですが、なかなかぴったりしたのに当たりません。その途上で見つけたので、上記を紹介しておきます。
「志を高く持って・・・・」について、何か心当たりのあるひとは教えてください。