平成22年7月12日(月) 目次へ 前回に戻る
おばばどののおっしゃるには・・・・・・・・・・・・
瀧州に紅の蝙蝠というものがいるのじゃ。
体色は濃い紅色。ただ翼の骨脈だけは黒みがかった色をしている、という。その性、夫婦の情を尊び、昼間は
双伏紅蕉花間。
紅蕉花の間に双(なら)び伏す。
赤い芭蕉の花の間に、二匹並んでじっとしている。
もしこのうちの一匹を捕まえると、もう一匹は離れようとしないから、結局二匹ともに捕らえることができるのだ。
南方のひとびとはこれを捕らえて殺し、乾燥させて身につけておく。すると異性の気を引くことができるそうじゃよ、ひっひっひっひ。
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布穀という鳥の脚の骨と頚骨(クビの骨)は媚薬となるそうな。
男左女右帯之。
男は左に女は右のこれを帯ぶ。
男は腰の左側、女は腰の右側に、これをぶら下げておく。
と、異性を誘うことができるのだそうである。
気をつけねばならないのは、これを着けたまま水の中に入るときで、周囲に他のひとがいなければいいがが、もし側に他のひとがいて、そのひとがやはりこの布穀の骨を身につけていると、
置水中能相随逐。
水中に置くによく相随い逐う。
水の中ではするりと止めてある紐から抜け出して、他人の布穀の骨を追いかけて行ってしまう。
ことがあるからじゃと。ひっひっひっひっひ。
ちなみに「布穀鳥」とは何ものか。和名抄に「布布止利」のことだというので、「ぬのぬのしり」とは何であろうかと調べてみましたら、和漢三才図会に「ふふとり」で「郭公」のことであるというてあった。
ということで、必要なひとはカッコウを捕まえてください。
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天帝の娘が恋しい男を追いかけて地上をあちこち旅しているうちに、姑揺山で死んでしまい、茎草(けいそう)という草に変化してしまった。
この草を乾して身に帯びているとやはり男の気を引くことができるそうじゃよ。
ただし、
左行草令人無情。
左行の草は人をして情無からしむ。
左に倒れていた草をとって身につけていると、相手のこころを冷やしてしまうことになる。
ので要注意じゃ。ひっひっひっひっひっひ。
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もっといろいろ変なことが(というか変なことばかり)書いてありますが、夜遅くなってきたのでもう止めます。唐・段公璐の纂する「北戸録」より。念のため言っておきますが、効くはずないと思いますよ。