平成22年6月7日(月)  目次へ  前回に戻る

いろいろと疲れますなあ。いつまでこんなことに付き合っていなければならんのか・・・。あんまりうるさいとこちらもまことの能力を出してしまうかも・・・。

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明の時代、葛可久というひとは、すぐれた医術の持ち主であるといわれていたが、中年を過ぎても家貧しく、彼のまことの能力を知らぬ者たちからは庸医(大したことの無い医者、やぶ医)と目されていた。

あるとき、村里中の不良少年たちが可久に難癖をつけ、あわよくば金品を巻き上げようと考えて葛家にやってくると、その門前で「可久、往診を頼もうぞ」と大声で呼ばわった。

めんどうなので誰も相手をせずに放っておいたところ、

一少年従牖躍入室。

一少年、牖(ユウ)より室に躍入す。

一人の少年が壁の窗から室内に飛び込んできたのだった。

そして言うに

召可久診視不騐。

可久を召すも診視して騐(ケン)せず。

「騐」(ケン)は「験」(ケン)と同じ意で、「しるし」「ためし試みる」こと、ここでは「不験」すなわち、診察しても病気の「兆(しるし)」を見つけられないことを言う。

「可久よ、おまえさんを呼んで診てもらっても、どこが悪いのか言い当てられないだろうよ。」

窗の外から不良少年たちは、

群噪之。

これを群噪す。

みなでそのこと(「験せず」)を言いはやした。

しかし、可久は彼をじろりと見て、左右に首を振り、曰く、

腸已断矣。当立死耳。

腸すでに断てり。まさにたちどころに死すべきのみ。

「おまえはハラワタが切れてしまっておるぞ。手の施しようが無いわい」

「なんだとーー!」

と少年は可久に襲いかかろうとしたが、即座に腹を抑えてかがみこんでしまい、仲間に助けられて葛家を出て行ったが、家に帰る前に苦しみながら死んでしまったという。

・・・と、徐禎卿が書いている。

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と、「元明事類鈔」巻十八に書いてあった。いつハラワタが切れてしまったのかわからない。いつ切れるかわからないというのは、おそろしいことである。

 

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