平成22年3月21日(日)  目次へ  前回に戻る

唐のころのことです。

西門季玄の家に良酒あり。

白酒(清酒)の中に

墨花

黒い花びら

が浮き上がるのだ。「花」は酒糟であろう。

斟於器中、花亦不散。

器中に斟すれども花また散ぜず。

酒器に移し替えても、その「花」は消えてしまわない。

「斟酌」する、の「斟」も「酌」もお酒を「勺」(ひしゃく)で「爵」(さかずき)に注ぐことをいう。うまく量を測って注いでさしあげねばならないので「斟酌」の語意になる。

なぜ爵に移し替えても消えない「花」が浮かぶかというと、酒を醸す樽の中に「肝石」というものが入れてあるからだ、という。

この酒を「二色酒」というたが、西門の家ではこの酒を秘酒とし、自家の宴席以外の場では出さないこととしていた。

そこへ崔道旅というひとがやってきて、この二色酒を求めた。

西門季玄が断ると、崔はその懐から

金貨、銀貨、銅銭

の三種の貨幣を出し、

以我三様銭買君二色酒、欲辞得乎。

我三様銭を以て君の二色酒を買わんとすなり、辞さんと欲するも得んや。

わたしは三つの様を呈した貨幣を以て、あなたの二色酒を買おうというのです。(一色多いのですから)だめだというわけにはいきますまい。

西門季玄は苦笑してこれを許したということである。

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後唐・馮贄「雲仙散録」より。「常新録」より引くという。

貨幣価値が何たらかんたら、と理屈を言いたくなってきました・・・が、今日は久しぶりで飲酒して眠いので寝ます。

 

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