むかしむかしのそのむかし。
噲参というおとこが母と二人で暮らしていた。その生活は貧しかったが、参は親孝行で親子ともに心は豊かであったのだ。
あるとき、
有玄鶴中箭。
玄鶴の箭に中せるあり。
黒い鶴が矢に当たって苦しんでいるのに出会った。
「これはどうしたことか・・・。かわいそうにのう」
気のいい噲参は矢を抜いてやると、
収養療治、瘡癒放之。
収養して療治し、瘡癒えてこれを放つ。
家に連れ帰って治療し、傷が癒えると放してやったのである。
「もう悪いやつに傷めつけられるでないぞ」
噲参は鶴が見えなくなるまで見送りました。鶴は名残惜しそうに羽ばたいていきましたのじゃ。
・・・・・やがて、この鶴、恩返しにやってきた。
母一人と暮らす気のいい息子のところに恩返しにやってくるおつうさんとの間に淡いロマンスが芽生える―――とよかったのですが、
鶴雌雄双至、各銜明月珠以置参家。
鶴雌雄双(なら)び至り、おのおの明月珠を銜えて以て参が家に置く。
メスとオスの鶴が二羽、そろってやってきたのだ。二羽それぞれくちばしに夜にも光帯びる「明月珠」といわれる名宝をくわえて来て、噲参の家の前に置いて行ったのである。
なんだ、ツガイになっておられたのですね。お仲が良くてよろしいことです。
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梁・任ム「述異記」より。もちろん、これが「鶴女房」の原話です。
今日はあちこちで春一番が荒れたようですなあ。天気はともかく週末だから「お針娘ミミーの日曜日」でも聴いて眠りますよ。
六日も空を見なかった 六日も土を踏まなんだ だからミミーの日曜は リュクサンブールに幕があく ・・・
さてもこの歌、どなたの歌いし歌ならん?