落日ですなあ。
斉の景公(在位前547〜前490)が飲酒をほしいままにし、
酔而解衣冠、鼓琴以自楽。
酔いて衣冠を解き、琴を鼓して以て自ら楽しむ。
酔っていい気分になり、王位を示す衣も冠を脱ぎ捨てて、自ら琴をじゃんじゃんかき鳴らし、うひゃひゃ状態となった。
そして、左右の者を見返って、
仁人亦楽此乎。
仁人もまた此れを楽しめるか。
「うひゃひゃ、仁徳ある立派なひとも、やはりこんなことは楽しいのであろうか。」
すると、左右の者は答えた。
仁人耳目猶人、何為不楽乎。
仁人耳目ひとのごとし、何ぞ楽しまざると為さんや。
「仁徳ある立派なひとの耳と目は、やはり普通のニンゲンと同じとございます。どうしてこんな楽しいことが楽しくない、ということがありましょうか。」
「そうであるか?」
「そうでございますよー」
「ほんとにそうなのであるな?」
「もちろんでございますよー」
「よし、それでは・・・」
景公はうひゃひゃと笑いながら言った。
駕車以迎晏子。
車を駕して以て晏子を迎えよ。
「馬車を出して、晏嬰先生をお迎えしてこい。」
「晏子」(=晏嬰)は当時の斉の賢人宰相である。景公は、臣下とはいえ、「仁人」とはこのひとのような方をいうのだ、と尊敬していたのであった。左右の者に聞くと、「仁人もこの状態は楽しいはずだ」と言うので、その尊敬するひとと、一緒に楽しもうというのである。
早速馬車が差し遣わされ、晏子が呼ばれてまいりました・・・
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続く。「韓詩外伝」巻九より。
本日は長い(心の)旅から帰ってまいりましたので、ここまでにしておきとうございます。それにしても、長い旅から帰ってきて目にするこの国の、荒れ果てたありさまはどうだ・・・とかうんたらかんたら。