蟲の季節が近づくぜ。(↓とは特に関係ありません)
昨日は弓作りの工人のお話をしました。これは軍事技術ということになります。
一方、前漢の都・長安には丁緩という巧工(技術者)がおった。
このひとは、以下のようなものを作ったという。
@常満灯
いつも光が満ちている灯りらしいです。燃料など精しいことはわからないのですが、その周りに彫刻か画か不明ですが、
七龍五鳳、雑以芙蓉蓮藕之奇。
七龍五鳳、雑(まじ)うるに芙蓉蓮藕の奇を以てす。
龍七匹、鳳五羽、その間に蓮の花・葉・根のまたとない模様が描かれている。
というので、目を瞠るものがあったという。
A被中香炉
被り物、要するに布団の中で使う香炉、ということで、倒したり転がしても炎や灰があふれたりこぼれたりしないように、
機環転運四周、而炉体常平。
機環の四周に転運し、而して炉体常に平らかなり。
転がるとからくりの輪が回りをぐるぐる回るが、炉の本体は常に平らかに保たれている。
仕組みになっていた。記述だけ見ると「地球ゴマ」みたいですが、近代日本にも布団の中で使える行火にこんなのがあったと記憶(どこの民俗資料館に行ってもある)します。すごい技術であることは確かです。
B七輪大扇
これは連結された七つの輪にそれぞれ扇がついているもので、これらの扇の起動は一箇所でできるらしく、
一人運之、満堂寒顫。
一人これを運らせば、満堂寒顫(かんせん)す。
一人が一箇所で(ハンドルを)回せば、巨大な部屋中に涼気が行きわたってふるえるほどである。
「顫」(セン)は「ふるえる」。
・・・これらはすべてシビル・エンジニアリングである。いずれも平和の技術です。すばらしい。ただし、みな宮中の用を為すばかりで民間の生活向上に直結しなかったのであった。
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漢・劉歆の撰になる「西京雑記」に書いてある。この書は東都の洛陽に対して西都・咸陽(長安)に皇帝のあった秦と前漢の時代の逸事を記す。おもしろおかしいものが多い。