明治より昭和にかけて活動した奇才・半狂堂主人の「半狂堂随筆」中に、「在るひと」の言として以下のようにあった。
植物は土中が頭である。人間から言へば逆さに立つてゐるのぢや。何でも生物は頭のはうで飲食物をたべて臀部(しりのはう)へ排泄するのが規則である。それゆへ土中の肥料(こやし)を吸ひ取る植物の根は頭(かしら)で、花や実は植物の糞(くそ)である。人間はその糞を食つて喜んでゐるのぢや。
なるほど、そうか。これは勉強になった。よし、これからは植物の花や実は食ふまいぞ。では寝る。
・・・と思ったところ、同じひとが、大正六年にこの説を批判して、
植物の発育機関は、その根ばかりでなく、葉が空気中の炭酸瓦斯を吸ひ取つて、その栄養分としてゐることを度外にした滑稽論ではある・・・。(「面白半分」)
としていることを知ってがっかりした。
なお、半狂堂主人は宮武外骨のことである。