↑酔っ払っているひと傍から見ているとオモシロい。
ぎっくりになった。まいったです。つらい。仕事行けない。
というわけで、今日はぎっくりで座っているのもつらいので、短めに切り上げますよ。
唐の末に朱秀才というひとあり。隴州の遂寧府のひとである。
文学に秀でて進士となって長安に出て来た。「楊貴妃、明皇に別るるの賦」という名作があったという。
しかるに泥酔して前後不覚になる癖があり、周囲のものはいずれ酒席において失敗するのではないかと心配していた。
あるとき、長安市中において隴州防禦使の鞏咸という将軍と知り合い、ともに飲むことになった。
鞏咸はもともと蜀のひとであるが、現在は朱の郷里を任地にしていることから、意気投合して二人ともしこたまに飲んだ。
ところが、大変不幸なことに、この鞏咸というひとも泥酔して前後がわからなくなる癖があったのである。
時に鞏咸は、任地に戻る前に新たに注文した剣が鋳出されて届いたばかり。十分に酒が回ってきたあとで、鞏咸は「嗚呼、この剣を放って朝廷に仇する者を斬らんかな」と歌いつつ、するりと鞘から抜きだした。
嗚呼、気○がいに刃物ならんかな。
宴席の灯火のもと、剣身には妖しき光ゆらゆらと揺らめいて、心も吸い込まれるばかり。正気の者でも惑わされそうな光である。しかも二人は酔っていた。
鞏咸曰く
「さて、この剣の切れ味はどうであろうか。
如何得一漢試之。
如何ぞ一漢を得てこれを試みん。
なんとかして野郎を一人連れてきて、試してみたいものじゃのう」
すると朱秀才
「やや、それならここに、ここにおりますぞ、このわしが」
と言い、
便引頸。
すなわち頸を引く。
その場で、鞏の前に首を伸ばしてみせた。
一座の者どもが笑ったり囃したり――する暇も無く、鞏の手の剣が一閃したのかしなかったのか、それさえ目に留まらぬうちに、
俄而身首異処。
俄に身首異処となる。
あっという間に体と首が別々になって転がった。
という。
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これは五代・孫光憲の「北夢瑣言」巻六にあり。唐末から五代の間、まことに殺伐としているので、みんな平気でこんなことしていたのでしょう。
孫光憲さらに評していう、朱秀才はお酒のために身を誤って、
惜哉、死非其所。
惜しいかな、死してその所を得ず。
惜しいことに死ぬべきところでないところで死んでしまったのである。
戒むべし、戒むべし。