平成21年10月31日(土)  目次へ  前回に戻る

唐の咸通年間(860〜874)のこと、荊州に「唐五経」(五経に通じた唐さん)とよばれる読書人があった。学識は精密にして博く、心栄えは高く、多くのひとの尊敬を得て、その弟子は五百人ともいわれ、(大地主や役人にならずとも)彼らの納める授業料で十分生活ができるほどであった。

このひとの有名な言葉に、次のようなものがあった。

不肖子弟有三変。

不肖の子弟に三変あり。

親不孝ものは三つの形態に進化していくものである。

@第一変為蝗蟲。

第一変は蝗蟲と為る。

第一段階では、イナゴになる。

謂鬻荘而食也。

荘を鬻ぎて食うを謂うなり。

イナゴは田畑を食い尽くす=父祖伝来の荘園を売り飛ばして食いつぶす。

A第二変為蠧魚。

第二変は蠧魚(とぎょ)と為る。

第二段階では、シミ(紙食い虫)になる。

謂鬻書而食也。

書を鬻ぎて食うを謂うなり。

シミは本を食い荒らす=父祖伝来の書画の類を売り飛ばして食いつぶす。

B第三変為大蟲。

第三変は大蟲と為る。

第三段階では「大きな蟲」=トラのこと=と為る。

売奴婢而食也。

奴婢を売りて食うなり。

トラは人間を食い破る=譜代の下男下女を売り飛ばして食いつぶす。

ああ。

三食之輩、何代無之。

三食の輩、いずれの代にかこれ無からん。

この「三食」のやからは、いずれの時代にいないことがあろうか(あらゆる時代にいる)。

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おお、カシコい方々よ、何かの諷刺ではございませんので悪しからず。林孟文「北夢瑣言」巻三より。

 

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