どんどん追い込まれていく。
昔からの知り合いともつナベ食ってきました。「ぶひぶひ」と鳴きながら食っている間に、コロナウイルス対策のために学校休校の呼びかけなんてものがあったみたいですね。
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新型コロナウイルスで有名になってしまった湖北省のお話です。
清・乾隆年間(1736〜95)の末年、白蓮教の乱が起こったのも湖北からでありました。
その反乱軍が隣の枝江まで迫ったという報せが、湖北・当陽の県庁まで届いた時、
当陽県令聞変、坐庁事、伝集書役。
当陽県令変を聞きて、庁事に坐し、伝えて書役を集めしむ。
当陽県の県令は、事件を聞いて、県庁の事務室に座り、県の下級官吏たちである書吏や下役の者たちに声をかけて集合させた。
逃げ出してしまう県令も多い中、名前が伝わらないのが残念なのですが、このひとはかなり肝の据わった人だったらしい。
県令は、下級官吏たちを集めると、彼らに告げた。
白蓮教已反、賊踞枝江之濯湾脳、与本邑界連。
白蓮教すでに反し、賊枝江の灌湾の脳に踞りて、本邑の界と連なれり。
「白蓮教徒がついに反乱を起こした。反乱軍は隣県の枝江の長江沿いの灌湾の奥に陣地を築いているという。本県との県境のすぐ向こうだ。
すぐに対応を取らねばならん。まずは、
邑中習教者宜先厳捕、以防内訌。
邑中の習教者、よろしくまず厳捕し、以て内訌を防ぐべし。
県内の当該教徒たちを予備拘束して、内部から反乱するのを防止しようではないか」
と言って、下級官吏たちの顔をぐるりと見回した。
しかし、下級官吏たちは誰も答えない。
「どうした?」
「ぷっ」
答えないばかりか、可笑しそうににやついたり、噴き出すやつまでいる。
「どうした? なぜ答えん!」
すると、一人が言った、
「よろしい、県令どの、何故答えないかお教えしよう」
そして、
書役斉声曰、我等即白蓮教也、更誰捕。
書役声を斉(ひと)しくして曰く、「我等即ち白蓮教なり、更に誰か捕らえん」と。
書吏と下役たちは、声をそろえて言った、
「おれたちはみな、白蓮教徒なのだ! いったい他の誰を捕まえに行けというのか!」。
「なんじゃと!」
令拍案怒罵曰、爾輩反乎。
令、案を拍(う)ちて怒り罵りて曰く、「爾輩反するか」と。
県令は、机をたたき、怒りとともに罵声を浴びせた。「おまえら、謀反か!」
書吏たちは答えた、
反則反耳、何怒為。
反はすなわち反なるのみ、何ぞ怒るを為さん
「謀反? そう言われればそうでしょう。しかし、どうしておまえに怒鳴られなければならないのだ!」
ここまで地方と人民を追い込んだのは、おまえたち中央官僚の苛斂誅求ではないか。いわゆる「官逼民反」(かんひつみんはん)、すなわち役人が人民を追い込み、このために謀反せざるを得なくなったのだ、というのだ。
「け、けしからん!」
令払袖起、群役争先拉殺之、遂据当陽県城。
令、袖を払いて起つも、群役先を争いてこれを拉殺し、遂に当陽県城に据う。
県令は袖を振って立ち上がったが、下級官吏たちは先を争って県令を捕まえ、これを殺してしまって、ついに当陽県の城門の上にその遺骸をさらしものにした。
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清・孫静安「棲霞閣野乗」下より。なかなか骨のある役人じゃったな。それにしても白蓮教徒さえこれだけ浸透していたのですから、ウイルスなんかあっという間に拡大することでしょう。いや、ずっと前から忍び込んで、時を待っていたのかも知れない。