「こいつびびりのぶたとのだぜ、おどろかしてやれ」「ぶびー」眠りの深いときはいいのだが、浅いときなどに恐ろしいおばけが出て恐怖を感じることがある。
今日も眠かったですねー。
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五代から宋にかけての時代のことです。
河南・崋山の真人(真人は高位の道士の称号)・陳摶(ちんたん)さまは
隠於睡。
睡に隠る。
睡眠に隠れ棲んだ隠者であった。
と評せられた。
馮翌の読書人・寇朝一は、
常事真人得睡之崖、略後還郷、惟睡而已。
常に真人の睡るを得るの崖に事(つか)え、略(やや)後に郷に還るに、ただ睡るのみ。
いつも真人さまがその先で眠っている崖にいてその道を学んでいたが、その後郷里に帰ると、
「すばらしい術を身に付けてきたのじゃ」
と言って、ただただ眠っていた。
すばらしい。
河南南部のひと劉垂範は
往謁、其従以睡告。
往きて謁するに、その従、睡を以て告ぐ。
遠い道のりをたどって、その寇朝一に面会しに行った。すると、朝一のおつきの童子が、
「先生は眠っていまちてなー」
と睡眠中で面会できないと伝えた。
「なんと。遠くから来た者にその仕打ちか・・・。それでは待たせていただきますぞ」
垂範座寝外、聞齁鼾之声雄美可聴。
垂範寝外に座すに、齁鼾(こうかん)の声雄美にして聴くべきなるを聞けり。
垂範が寝室の外に座り込んでいると、いびきの音が聞こえてきたが、その音は雄大で美しく、耳を傾けるにふさわしかった。
「うーん・・・」
半日も座って寇のいびきを聞いているうちに、劉垂範はなんだか納得した顔で、
退而告人、曰寇先生睡中有楽乃華胥調双門曲也。
退きて人に告げて、曰く、寇先生は睡中に楽有りてすなわち華胥調双頭曲なり。
退出してきて、人に向かって言った。
「寇先生は睡眠中に音楽を得ておられるようで、あれは華胥(仙界)音階で、「二つアタマの歌」というのを演奏しておられた」
あるひとが、うさんくさそうに訊ねた。
未審譜記如何。
いまだ譜記を審らかにせざるを如何せん。
「楽譜がまったくわからないので、評価のしようがありませんな」
すると劉は、
以濃墨塗紙満幅、題曰混沌譜。
濃墨を以て紙に塗ること満幅、題して曰く「混沌譜」と。
筆にたっぷり墨を付けて、紙いっぱいに塗りつけ(音符の部分は真っ黒になった)、そこに「混沌譜」と題名をつけた。
そして言った、
即此是也。
即ちこれ、これなり。
「すなわちこれが、それ(楽譜)である」
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「清異録」巻三より。すばらしい・・・と思ったが、長時間眠り続けイビキがうるさい、とか、何らかの睡眠障害があるような気もしてきた。明日は午前中雨みたいだからゆっくり眠りたいものである。(こちらも参考にしてください。→「陳摶高臥」)
ぶびびー! おばけたちがあんまり怖がらせたのでぶたとのがキレて暴れはじめた! これが「暴れん坊ぶたとの」の始まりである。