昼飯をお代わりし続けていたら晩飯の時間になった―――時ぐらいの大きな気持ちに、週末が来ると、なる。
週末だ。地下に潜ってしまった肝冷斎も週末になると蠢いているにちがいない。
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ひっひっひ。わしは地下に潜行しているのじゃ。
「地下にいると暗くて閉塞感に襲われるなど不健康ではありませんか」
という質問がありますが、そんなことはありません。
得趣不在多、盆池拳石閒、煙霞具足。
趣きを得るは多きに在らず、盆の池、拳の石の間にも煙霞は具足す。
よい雰囲気を得るには、多大な材料が必要なわけではない。おさらの池、拳ぐらいの大きさの石であっても、（うまく組み合わせて盆景を作れれば）そこに雲やかすみは十分にある（ように感じられる）ものだ。
会景不在遠、蓬窗竹屋下、風月自賖。
景に会するは遠きに在らず、蓬の窗、竹の屋の下にも風月自ずから賖なり。
「賖」（しゃ）はふつう「おぎの・る」と訓じて、「後払いで買う」という意味ですが、ここで「おぎの・る」と訓じるとあとで払うモノが何なのかわかりません。「はるか」「とおい」という訓みがあるので、そちらを採ります。
よい光景に出会うには、遠隔の地に出かける必要があるわけではない。貧しい草ぶきの窓、竹組みの屋根の下でも、（心のどかにしていられれば）そこから風がそよぎ、月が見え、（世俗から）はるかに遠いところにいる（ように感じられる）ものだ。
ということで、意外といい生活しているんですじゃ。
まったく、
会得個中趣、五湖之烟月尽入寸衷。
個中の趣きを会得せば、五湖の烟月はことごとく寸衷に入る。
もしもここにある雰囲気を感じとれたなら、（蘇杭にある）五つの湖の上、もやにかすんだ月の光景は、まるっとすべて心の中に入り込んでくる。
そして、
破得眼前機、千古之英雄都帰掌握。
眼前の機を破得せば、千古の英雄もすべて掌握に帰せん。
すぐ目の前にある（世界の）からくりを見破ることができれば、古来の英雄たちもすべて自分の思いのままに動きはじめることだろう。
でかい気持ちになるんじゃ。
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「酔古堂剣掃」巻五より。週末は気持ちが大きくなってまいります。こんな気持ちなら、地下から出てきて世俗世界に顔を出せるかも・・・。