サルやウサギがいないと、穏やかな海辺である。
八月半ばからがんばっていた肝熱斎が昨日で逃亡。今日からは肝涼斎が対応することになりました。どうせしばらくしたらわたくしも逃亡に追い込まれると思いますが、よろしくお願いします。
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次の詩を以てご挨拶に代えさせていただきます。
昨日出城市、 昨日、城市に出、
乞食西又東。 乞食すること、西また東。
昨日、(庵を出て)町なかに出かけ、
あちらこちらと乞食して歩いた。
肩瘦覚嚢重、 肩、痩せて嚢の重きを覚え、
衣単知霜濃。 衣、単にして霜の濃きを知る。
老いて肩の肉が落ちたので、背負った頭陀袋が一段と重く感じるわい。
服が一枚しかないので、霜が降りてかなり寒くなってきたのがわかるんじゃ。
ああ、それにしても、町なかに出てみたが、
旧友何処去。 旧友いずこにか去りし。
新知少相逢。 新知は相逢うこと少なし。
昔からの友人はどこに行ってしまったのであろうか、姿を見ない。
新しい知己と知り合うことは滅多に無いから、どこにも知るひとは無くなってきたなあ。
ふらふらと彷徨って、
行到行楽地、 行きて行楽の地に到るに、
松柏多悲風。 松柏に悲風多し。
むかし楽しく歩いたあたりまで来たが、
松や柏を悲しげな風が吹いているばかりである。
「松柏」は墓場に植えられる木、ということになっております。
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大愚良寛さんの詩でした。すばらしい。
また、この帰り道みたいな詩があります。
城内乞食休、 城内に乞食休(や)め、
得得携嚢帰。 得得として嚢を携えて帰る。
この「得得」(とくとく)は満足した様子ではなく、「彳亍」(てきちょく)などと同じく、歩行のオノマトペ。「てくてく」とか「とぼとぼ」です。
町なかで乞食を終え、
とぼとぼと嚢を携えて帰り行く。
帰来知何処、 帰来するは、何処と知るや、
家在白雲陲。 家は白雲の陲(ほとり)に在り。
どこに帰っていくのか、御存じでしょうか?
わしの庵はあの白雲のかかっている山の中じゃ。
ああ、おいらも早く帰りたいなあ。なお、岡本全勝さんのHPから時事ドットコムに入ると新しい連載が読めるみたいですよ。