さわやかな夏空をとんぼが行く。われらは少しもさわやかではないが。
頭痛いんです。さわやかなコトバでも聞きたいものだ。
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万籟発声、倶直入。
万籟声を発すれば、ともに直ちに入る。
風が吹いて、音を鳴らすあらゆるものがおのれの音を発すると、すべてはそのまま(その物固有の音となって)耳に入ってくる。
「万籟」の「籟」は「三つ穴の笛」が原義で「風が吹き通って鳴らす音の響き」の意味になります。
その中で、
惟出松間竹裡、曲折抑揚、八音同奏。
ただ松間・竹裡に出づるもののみ、曲折し抑揚し、八音同奏す。
特に、松の間や竹林の中から聞こえてくるものは、曲がったり折れたり、下がったり上がったりしながら、金属・石・糸・竹・ひさご・土・革・木から作られる八種の楽器を同時に演奏したときのようである。
また、
或如細浪軽吹、擢声遠度、或如狂濤滂浡、蛟竜夜驚。
あるいは細浪軽く吹き、声を擢して遠く度るが如く、あるいは狂濤滂浡として、蛟竜の夜に驚くが如し。
ある時には、さざなみが軽く風に吹かれているとか、櫂の音をさせながら遠いところを舟が渡っていくように聞こえたり、ある時には、狂った波濤が逆巻き砕けているとか、水龍が夜中に何かに驚いて声を発しているようにも聞こえたりする。
まことに
妙韻異響、十倍天樂。
妙韻異響、天樂に十倍せり。
奇妙な音、不思議な響き、天上の音楽に十倍するほどである。
天上の音楽を誰も聴いたことは無いんですが。
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明・呉従先「小窗自紀」より。今日は夏至だったんで日が長かったが、その日が暮れると、いにしえより魔物たちが騒ぐというミッドサマーナイト(過ぎ越しの夜)でございます。どこかの樹上からはカラスか何か、異様なものたちの声が聞こえる。ぎげー。ぎっぎっぎー。
妖精たちよ、夜明けまで
踊れ、やしきのすみずみまで。 (英・シェークスピア「夏の夜の夢」(小田島雄志訳))
明日からはだんだん日が短くなってくるのだ、と思うとなんだかさびしくなってくるなあ。肝冷斎族ももう黄昏なのだ。
われら役者は影法師、
みなさま方のお目がもし
お気に召さずばただ夢を
見たと思ってお許しを。