ヒヨコは雨に弱いようで、濡れないようにしているようである。モグもやばいが濡れてもいいのであろう。
みなさんこんにちは。お久しぶりです。5月25日から寝ていて、十日ぐらいで起きてくるつもりだったが、少し寝過ごしてやっと起きてきました。寝ている間、影肝冷斎や虚肝冷斎が更新していたみたいですが、本家よりも弱いやつらなので、やはり一週間もつかもたないか、だったみたいですね。ああ情けないのう。
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戦国・斉の孟嘗君が秦の国に行こうとした。多くのひとが危険だと諫めたが、孟嘗君は取り合わなかった。孟嘗君が斉を代表して秦に入り、東西の強国である斉と秦の間で友好が成り立つのを、秦に対抗するために斉を中心に他の諸侯国の連合を作ろうとするいわゆる「合従」派がいやがっているのである、と認識していたからである。
そこへ蘇秦の弟でこの時期の合従派の中心人物であった蘇代がやってきて、面会を求めました。
孟嘗君は取次ぎの者を通じて曰く、
人事者吾已尽知之矣。
人事なるものは吾すでに尽くこれを知れり。
「わたしはニンゲン世界のことはもう全部知っておりますよ」
いまさらお聞きすることはありません、というのである。
蘇代は言った。
臣之来也、固不敢言人事也。今且以鬼事見君。
臣の来たるや、もとよりあえて人事を言うにあらざるなり。いままさに鬼事を以て君に見(まみ)えんとす。
「やつがれがまいりましたのは、もちろん、ニンゲン世界のことを話に来たのではございません。本日は、まさに霊界のことをお話ししようとして参上したのです」
「へー」
孟嘗君見之。
孟嘗君、これに見(まみ)ゆ。
孟嘗君は、(興味を惹かれて)面会することとした。
面会すると、蘇代は言った、
今者臣来過淄上、有土偶人与桃梗相与言。
今、臣来たりて淄(し)上を過ぎるに、土偶人と桃梗(とうこう)とあいともに言う有り。
「梗」には「木製人形」の意味があります。
「やつがれ、今こちらにまいります途中、淄(し)の川のほとりを通り過ぎましたところ、(道ばたで何かの祀りをしたのでしょう、)土製の人形と桃の木で作った人形とが置かれていました。この両者が何やら話合っておったのでございます」
「へー」
桃梗謂土偶人曰、子西岸之土也。挻子以爲人。至歳八月降雨下、淄水至、則汝残矣。
桃梗、土偶人を謂いて曰く、子は西岸の土なり。子を挻(こ)ねて以て人と為す。歳八月に至りて降雨下り、淄水至ればすなわち汝を残(そこな)わん。
桃の木人形が土製人形に向かって言いますことには、
「おまえさん、おまえさんはもともと西岸の土じゃろ? おまえさんを捏ねて人の形にしたんじゃろ? これから今年も八月になって、雨が降りはじめ、淄水の水位があがってこのあたりまで水が来たら、おまえさんは融けて砕かれてしまうのだなあ」
これに対して、土偶のやつが答えて言うに、
吾西岸之土也。土則復西岸耳。今、子東国之桃梗也。刻削子以爲人。降雨下、淄水至、流子而去、則子漂漂者、将如何耳。
吾は西岸の土なり。土はすなわち西岸に復するのみ。今、子は東国の桃梗なり。子に刻削して以て人と為す。降雨下り淄水至りて子を流して去れば、すなわち子は漂漂たうものなり、まさに如何せんとするのみ。
「おいらはたしかに西岸の土ですよ。しかし土は水に溶け砕ければ、また西岸に溜まるだけです。ところがおまえさまは東国の桃人形で、もとの木を刻み削って人の形にしたんだよね。雨が降りはじめて淄水の水位があがってこのあたりまで水が来たら、おまえさまを流し去ってしまうだろう。おまえさまは漂い流れていくばかり、さてどうするつもりなのだ?」
「へー」
孟嘗君は熱心に聞いていました。
「さて、
今秦四塞之国、譬若虎口、而君入之。臣不知君所出矣。
今、秦は四塞の国なり、たとえば虎口のごとく、君これに入らんとす。臣、君の出づるところを知らず。
現代の情勢をよくよく考えていただくと、秦は四方をふさがれた土地柄、たとえば内側に向かって牙が生え、逃れられなくなっているトラの口のようなものです。やつがれは、あなたが秦に入ったあと、出てくることができるかどうか、疑っておるのでございます」
「へー。なるほど、桃人形になるわけですな」
と言って、孟嘗君は秦に行くのを取りやめたのでございました。
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「戦国策」巻四・斉策上より。人形同士の話し合い、楽しいなー、と思っていたら、オトナの世界の合従連衡の駆け引きだったんです。それにしても、土偶人は、淄水の水が至れば、やっぱりおいらは泥人形、溶けて砕けてしまうのさ、と「泳げ!たいやきくん」みたいでかなしいところである。おいらもよく似た者でかなしい・・・が、あれ? みなさん、なんで笑ってられるのかな?