平成30年5月21日(月)  目次へ  前回に戻る

自然の世界には、枯れたと思っていても、季節になると花が咲くことがあるのさぁー。俗世では、収まったはずの問題がまた吹きだしてきたりするのさぁー。

一度横になったらずっと寝ててもらいたい。終わったと思ったことがまた問題になってくると困ります。しかしなかなか寝ていてはくれないのだ・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・

江西・建昌の県境の辺地に奇妙な場所があるのでございます。

野田中有自然石碑、石人及亀、散在地中、莫知其数。

野田中に自然の石碑、石人及び亀有り地中に散在し、その数を知るなし。

野原の中に、人間が作ったとは思われない石碑や石人や石の亀が無数に散らばっているのである。

なぜ人間が作ったとは思われないかというと、

皆如鐫琢之状而無文字。

みな鐫琢の状の如くして文字無し。

どれもこれも彫ったり磨いたりしたようすはあるのだが、文字が刻まれていないのだ。

人工のものであれば、だれが何のためにいつ作ったか、ぐらいは記載されていると思われるのである。

しかし、

石人倒臥者多時有直立者。

石人倒れ臥する者、多時、直立する者有り。

石人の倒れて転がっているものが、往々にしていつの間にか立ち上がって直立したりしている。

うーん。

自然のものとも思われないのである。

さらに、

側近有石井深而無水。

側近に石井の深くして水無き有り。

近くには、石に囲まれた深いたて穴がある。この穴には、水は溜まっていない。

あるとき、

有好事者持火入其中、旁有横道莫知遠近、道側亦皆是石人焉。

好事者有り火を持してその中に入るに、かたわらに横道有りて遠近を知るなく、道側はまたみなこれ石人なり。

好奇心の強い人が、松明を持ってこの穴の中に降りていったことがあった。底まで行くと横穴に通じておったが、この横穴はどこまで続いているのかわからなかった。なぜならそのひと、一歩そこに入って恐ろしい光景に逃げ出して来てしまったからである。

松明の灯りに照らされて、道の両側にはずらりと物言わぬ石人たちが並んでいたのだ。

人間を超越したような存在が作ったのかも知れない。

・・・・・・・・・・・・・・・

五代・杜光庭「録異記」巻七より。古い墳墓を発見してしまったのではないかと思うのですが、倒れていたのが起き上がったりすることから、なんらかの謎の力が働き続けているのであろう。ほんとに困ります。

 

次へ