会議の席上におそろしい僧兵などが現れたら目が覚めるのではなかろうか。
週の半ば、アンニュイの中で「何か目の覚めるようなお話はないものか」とお思いのみなさんに、目の覚めるようなお話をいたしましょう。
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明の正徳七年(1512)三月、江西の餘干府にある仙居寨という駐屯地に、
夜震雷颶風、西北方有火如箭、遂一旗上、如燈籠。
夜、震雷颶風し、西北方より火の箭の如き有りて、一旗上に墜ち、燈籠の如し。
ある晩、稲光と雷鳴の中、激しい風が吹き出し、西北方の空から、矢のように火球が飛んできて、砦に掲げられた旗のうちの一本に落ちた。旗には火が点り、まるで燈籠のように見えた。
「わーい、かっこいい」
と騒ぎになりまして、
「こうしてみちゃえ」
と、
有卒撼其旗、火飛上竿首。卒因発火銃之、其火四散。
卒有りてその旗を撼(うご)かすに、火飛びて竿首に上る。卒、因りて火銃をこれに発するに、その火四散せり。
兵士の一人がその旗をぐらぐらと動かしてみたところ、火は飛び上がって竿の先まで昇っていった。そこで、別の兵士が銃を持ってきてその火に向かって
どっかーーーん!!!!
と発砲したところ、火は四方に飛び散って・・・
各寨槍上皆有光如星。
各寨の槍上、みな光有りて星の如かりき。
砦内のすべての曲輪に立てられていた槍の先に飛び移り、槍の先がみな星のように煌めいた。
のだが、
須臾而滅。
須臾にして滅せり。
すぐにすべて消えてしまいました。
消えてしまって何の痕跡もない。
「目が覚めるように不思議なことだったなあ。しかし終わってしまえば夢のようなことで、また眠くなってきたぞ、むにゃむにゃ・・・」
と思っていましたところ、その後、
五月、広西萬春北寨、槍上倶有火。
五月、広西萬春北寨にて、槍上ともに火有り。
五月にも、今度は広西の萬春府の北砦で、すべての槍の上に火が点った。
という情報が入ってきました。これは江西の事件と同じ事態ではないかと思います。
八月、山東秦始皇廟、夜鐘鼓自鳴、火起桑上、樹燔而枝葉無恙、廟宇毀而神像如故。
八月、山東の秦始皇廟に、夜、鐘鼓自鳴し、火桑上に起こりて樹燔くも枝葉は恙なく、廟宇毀たるるも神像もとの如し。
八月には、山東にある秦の始皇帝のお堂で、夜中に鐘や太鼓が勝手に鳴り出し、(堂庭の)桑の上から火が飛び出して、木は燃え上がっ(て幹は焼け)たが、その後確認すると枝や葉は何の影響も受けておらず、類焼してお堂の建物も焼けてしまったのだが、中に安置されていた始皇帝の神像はもとのままであった。
という事件の報せが入ってまいりました。
これは少し違うタイプの事件でありましょうか。
思うに、
祝融氏固自変幻。然未有如此之奇者。
祝融氏もとより自ずから変幻す。しかるにいまだかくの如きの奇なるものあらざりき。
火の精である祝融は、(火の形がそうであるように)本来的に変化してきわまりないものである。しかし、古来、これほどに不思議なことは無かったのではないだろうか。
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いやー、次々と不思議な事象が起こって目が覚めたなあ。しかし、だんだんとまたむにゃむにゃ・・・。「続耳譚」巻三より。
実は今日も会議で、目の覚めるような火球も飛んでこなかったので、眠った。もうダメだ。これまでは「もうほとんどダメだー」でしたが、最近は「もうほんとにダメだー」になってきた。もうすぐ「もうほんとにダメになりきったー」という過去完了形になって、社会の表面に何の痕跡も遺さず消えているのであろう。