「ピー、ウグイスがダンゴ盗りやがったでピヨ―!」「ぶたとのがぼんやりしているからおいらたちの取り分が減ったでピー!」と騒ぐヒヨコどもであるが、ぶたとのはこの前に定食を食べてきているので、ヒヨコたちの文句など耳に入らない。
今日はギリギリで済んだが明日もまたマズいことが起こり、今度こそ大爆発と予想される。昨日に引き続き困っております。明日こそ雨降ったら休もうかなあ。
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昨日に引き続き、戦国・魏の文公(在位前445〜前396)の逸話です。
ある時、
文侯、与田子方飲酒而称楽。
文侯、田子方と飲酒して楽を称(あ)げたり。
文公は、賢者の田子方らと酒を飲み、音楽を演奏させた。
本質的に宴会の好きな明朗な人だったのでしょう。
音楽を聴きながら、文公はおっしゃった。
鐘声不比乎。左高。
鐘の声、比せざるか。左高し。
「鐘の音がうまく調和していないのではないかな。左の方の鐘の音が少し高いぞ」
「さすがでございまピヨ」「よくぞお気づきになられまピヨたなあ」
と他のひとたちはヒヨコ臣下なので、あんまり考えもせずに公をピヨピヨとほめそやしたのですが、
田子方笑。
田子方、笑う。
田子方は何も言わずにニヤニヤと笑っているばかりであった。
文公はそれを見咎めて、お訊ねになられた。
奚笑。
奚(なに)ぞ笑える。
「なんで笑っておられるのかな?」
子方は申し上げた。
臣聞之、君明則楽官、不明則楽音。今君審於声、臣恐君之聾於官也。
臣これを聞く、「君明なれば官を楽しみ、不明なれば音を楽しむ」と。今、君は声に審らかなり、臣恐る、君の官において聾ならんかと。
「わたくしはこのような格言を聞いたことがございます。
―――賢明な君主は役人からの報告を聞くことを楽しまれるが、賢明でない君主は音楽を聴いて享楽に耽ることを楽しまれるものだ。
と。今お聞きしたところでは、とのさまは音楽にお詳しいようです。わたくしは、とのさまが役人からの報告の方についてはお聞こえにならないのかも知れない、と心配申し上げております」
「そんな理由でニヤニヤしていたのでピヨか!」「失礼なやつでピヨ―!」
とヒヨコ臣下どもはピーピー騒ぎましたが、文公は居住まいを正して、音楽を止めさせ、
善。敬聞命。
善し。つつしんで命を聞かん。
「わかりました。謹んで先生のおっしゃるとおりにいたします」
と言った。
宴会もお開きになってしまいました。こうして魏はどんどん強くなっていったのです。
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「戦国策」巻七「魏策上」より。音楽を聴くぐらいいいではないですか。マスメディアの用意する耳ざわりのいいことばかり聞いているよりは・・・と思うんですが。