平成29年5月22日(月) 目次へ 前回に戻る
自分たちだけで美味いもの食ってしまうと、後で怒りを買うこともあるので、みんなで食べるのがよい。
当方は、暑くなる→バテて動かない→体重増。ゆるせん。という状態です。
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・・・昨日の続きです。
とある大僚(政府高官)が広州に赴任してきたんだそうです。
役所に到着して馬車から降りましたところ、出迎えた部下のひとりが申し上げた。
郷保献土儀、陳列盈庭。
郷保、土儀を献じ、陳列して庭に盈つ。
「少数民族の首長たちから特産品の献上がございまして、庭いっぱいに並べられております」
「ほほう。どんなものがあるのかね」
庭には、各地の珍しいものが並べられ、その横ではそれぞれの部族の長らが畏まっております。
「うんうん、なるほどのう、さらにがんばってくだされよ」
と順次見て歩いていたが、ふと足を止めた。
大僚見巨蛇在中、謂其恐己、怒而責之。
大僚、巨蛇の中に在るを見て、謂うに「それ己を恐せしめんとす」と、怒りてこれを責む。
高官はその中に巨大なヘビがとぐろを巻いているのを見て、「わしを怖がらせて脅そうというのか!」とその側にひざまずいている部族長に怒鳴った。
少数民族にはコトバが通じません。
しかし部族長は叱られていることは分かったらしく、緊張した面持ちで俯いていた。
過十日、又献之。
過ぎること十日にしてまたこれを献ず。
十日ほどすると、献上品があるというので出て見ると、やはり同じような大蛇を持ってきていた。
高官は
又責之。
またこれを責む。
やはり同じように怒鳴りつけた。
その後しばらくは来ませんでした。
しかし、
越一月余、郷保数人共舁一大蛇、較前数倍。
越ゆること一月余り、郷保数人ともに一大蛇の前に較べて数倍するをを舁(かつ)ぎくる。
それから一か月余りしたある日、部族長は手下数人とともに、一匹の大蛇を担いでやってきた。そのヘビ、前回前々回に比べてもさらに数倍はあろうかという巨大なヘビである。
「むむむ・・・」
大僚又欲責之。
大僚またこれを責めんと欲す。
高官は、またこいつらを怒鳴りつけようとした・・・。
すると、そいつらは大慌てで
伏地乞哀。
地に伏して哀を乞う。
地面に土下座して、憐れみを乞う様子である。
「わしを脅すふうではないな」
高官は試しに通訳を呼んで彼らの言い分を聞いてみたところ、
蛇以百二十斤為率、今仗光威、忽得二百余斤。無有踰於此者矣。
蛇は百二十斤を以て率を為すに、今仗光(おお)いに威にして、忽ち二百余斤を得たり。これを踰ゆる者有る無し。
「一般にヘビは70キロ超のものが限界ですが、今度お見えになられた大官はたいへん権威がおありなので、このたび偶然にも120キロ超のものが手に入りました。もうこれ以上のものはございません。どうぞご勘弁ください」
というのである。
怒ろうと思ったが、変な言い分なので、幕僚に確認したところ、
「なんですと!」
「どういうことですか、ちゃんと我々に相談してくれないと」
「これまでのはどこへやったんですか!」
とみな大いに騒ぎ出し、申し上げた。
此不易得之物也。公幾乎錯過。
これ得やすからざるの物なり。公ほとんど錯過せるか。
「これは滅多に手に入るような代物ではございませんぞ。大官さまは、たいへんな間違いをしておられます」
「そうであったのか」
そこで少数民族のやつらも呼んで、役所総出でこれを食った。
時弟亦在座、尤大啖之、曰、世間無此味、不食不知其旨也。
時に弟もまた座に在り、尤も大いにこれを啖いて、曰く、「世間この味無し、食らわざればその旨きを知らざるなり」と。
その宴席にはこの話をしてくれたわたしの従弟もいた。彼はひとに負けないぐらいそのヘビ肉を食って、まわりの者たちと
「この世にこんなにうまいものはない。ところが、食べてみようとしないやつにはこのうまさはわからないのだ」
と言い合った。
もちろん高官も大いに喜び、少数部族の者どもは大いに面目を施した、ということである。
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わーい、よかったでちゅねー。みんなシアワセになったんだなあ。腹いっぱいになる大量の食べ物の話はなんだかシアワセになれます。体重増えなければもっとシアワセになれるが・・・。
清・破額山人「夜航船」巻三より。