平成29年5月8日(月) 目次へ 前回に戻る
「おれたちは悪の怪盗ニャルス団にゃ。狙った獲物はどこまで追い詰めるにゃ」「そうでチュー、あにき」「モグるん」
今日はなんにもしたくなくてしなくてはいけないことが何もできなかった。明日はしなければならないだろう、と思うとイヤさが募る。
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明の時代のころのことでございますが、浙江・呉県で石運びの船が運河をゆっくりと進んでおりましたとき、運搬夫たちが、
忽見船中盤一大花蛇、長六七尺、身斑文如錦纈、昂頭欲起。
たちまち船中に一大花蛇の、長さ六七尺、身に斑文の錦を纈(しぼ)れるが如きあるが、昂頭して起たんと欲するを見る。
船の中に巨大なニシキヘビがいるのに気付いた。そいつは体長2〜3メートル、ニシキのようなまだらの模様が浮かび上がり、ちょうど頭をもたげて伸び上がろうとしていた。
「こいつはでかいぜ」
「殺してしまおう」
と人夫たちはいきりたったが、船頭がこれを押しとどめた。
「殺せばもっと面倒なことになりやす。ここは放っておくにこしたことはございません」
乃聴其蜿蜒上岸、暫停船伺之。
すなわちその蜿蜒として岸に上るを聴(ゆる)し、しばらく船を停めてこれを伺う。
そこでそのヘビがうにょうにょと船から岸に移動するままにさせ、しばらく船を止めてその様子を見ていた。
ところでこの時、運河の堤防の向こうでは、
時耕夫数人、散置蓑笠於田中、荷鋤勤墾。其蛇便騰入一蓑笠之下。
時に耕夫数人、蓑笠を田中に散り置きて、鋤を荷いて墾(たがや)すに勤しめり。その蛇、すなわち一蓑笠の下に騰がり入る。
ちょうど農夫が数人、蓑と笠を田んぼのあちこちに置いたまま、スキをかついで開墾作業に従事していた。くだんのヘビは、その蓑笠のうちの一つの下にもぐりこんだのである。
と、そのとき、突然、
風暴起、驟雨従東南来、耕夫各馳取蓑笠。
黒風暴起し、驟雨、東南より来たりて、耕夫おのおの馳せて蓑笠を取る。
黒い雲が突然沸いて、強い風が吹き、激しい雨が東南の方向から降ってきた。「うわー」農夫たちはそれぞれ走ってきて、自分の蓑笠を取ろうとした。
「あぶない! その笠の下には・・・」
と船の中から呼びかけたが、雨も激しく、聞こえようがなかった。
見一人取至蛇所、大驚、蛇便直前搏噬。
一人の蛇の所に取り至りて、大いに驚き、蛇すなわち直前を搏ち噬むを見る。
そのうちの一人がヘビの潜んでいるところまで来て笠を取り上げて、(ヘビを見つけて)大いに驚いた。ヘビは目の前のそのひとに飛びつき、噛み付いたのが見えた。
ヘビは、
将此人咽喉噛断、血流滂沛、踣地立死。
この人の咽喉を将きいて噛断し、血流滂沛として地に踣(たお)れ立ちどころに死す。
そのひとののどに食いついてこれを噛み裂き、血がバシャーと流れて、そのひとは地に倒れ、あっという間に死んでしまった。
ほかの耕夫たちが気づいて、大騒ぎでスキやクワでヘビを撃ち叩いたが、
猝被逸去、不知其所在焉。
猝(にわ)かに逸去せられ、その所在を知らずなりき。
ヘビはあっという間にどこかに潜んでしまい、どこにいるのかわからなくなってしまった。
・・・そのとき、船頭はゆっくりとともづなを解いて船を前進させたのである。
運搬の人夫たちは船頭に
「待てよ、船頭さんよ。あんたがあそこでヘビを退治するのを止めるから、あの農夫は・・・」
と詰め寄ったが、船頭は言うに、
嶺南有報冤蛇。人触之、即三五里随身而至。若打殺、則百蛇相集。将蜈蚣自防、乃免。
嶺南に「報冤蛇」なるもの有り。人これに触るるに、即ち三五里随身して至る。もし打殺せば、百蛇あい集まるなり。蜈蚣を将(もち)いて自ら防がば、すなわち免かる。
「南チャイナには「復讐ヘビ」というのがおるのじゃ。ひとが少し触れただけで、数キロにわたってそのひとのあとをついてきて、仕返しの機会を探るのだ。うるさいと思ってもし打ち殺してしまったら、百匹の仲間が集まってきて、必ず復讐する。ヘビが恐れるムカデの力を用いて自らを護るのでなければ、とても逃げおおせるものではない。
おまえさんたちがそうならなかったことを、感謝すっことだな」
と。
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明・銭希言「獪園」第十四より。
ああイヤだなあ。この世の草むらには明日もニシキヘビが隠れているのだろう。そしておれがそれに噛まれるのを見ているやつらもいるのだろう。・・・と思うとイヤになってきて、会社行けなくなってきた。