平成29年3月6日(月)  目次へ  前回に戻る

「はるでポンポコ」「春雨じゃ、濡れて帰って風邪ひいて休みたいでぶー」

だいぶんあたたかくなってきました。今日は雨だったが、

わがせこが衣はるさめふるごとにのべのみどりぞいろまさりける (古今・紀貫之)

 あのひとの(春の)着物を洗い「張る」―――その「春」の雨が降るたびに、野辺のみどりはだんだん色濃くなってくるなあ。

の季節でございます。早春ですね。だが、まだ月曜日、一週間の精神面的には冬である。

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春のやるせない気分を先取りしてみます。

花映柳條、     花は柳條に映じ、

フ向緑萍池上。  フ(そぞろ)に緑萍の池上に向かいぬ。

凭欄干、窺細浪、 欄干に凭(よ)り、細浪を窺えば、

雨蕭蕭。       雨蕭々たり。

 花は柳の枝に映えて、

 のどかにかげを、みどりの浮草の泛ぶ池のおもてに落としている。

 さて、欄干にもたれかかって、池のさざなみを覗いてみると、

 さめざめと雨が降っていた。

その春雨の中を、

「それじゃあ、おいらは行くぜ」

そう言って、あのひとは去っていったのだ。

近来音信両疎索、 近来、音信両(ふた)つながら疎索、

洞房空寂寞。    洞房むなしく寂寞たり。

掩銀屏、垂翠箔、  銀屏を掩い、翠箔を垂れ、

度春宵。       春宵を度(わた)らん。

 このごろは声を聞くことも手紙の来ることもどちらも無くて、

 奥まった寝室は、むなしくさびしい。

 銀の屏風で囲われて、みどりのすだれを垂れたまま、

 ひとり、春の宵を過ごしている。

これはふられたんだね。

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唐・温庭筠「酒泉子」一「酒泉の町から来たあの子」の歌の節で、その一)(「花間集」より)。こんな詞をつくって花街の女たちにちやほやされていたのでは、士人たちに批判されても致し方ありますまい。

 

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