「はるでポンポコ」「春雨じゃ、濡れて帰って風邪ひいて休みたいでぶー」
だいぶんあたたかくなってきました。今日は雨だったが、
わがせこが衣はるさめふるごとにのべのみどりぞいろまさりける (古今・紀貫之)
あのひとの(春の)着物を洗い「張る」―――その「春」の雨が降るたびに、野辺のみどりはだんだん色濃くなってくるなあ。
の季節でございます。早春ですね。だが、まだ月曜日、一週間の精神面的には冬である。
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春のやるせない気分を先取りしてみます。
花映柳條、 花は柳條に映じ、
フ向緑萍池上。 フ(そぞろ)に緑萍の池上に向かいぬ。
凭欄干、窺細浪、 欄干に凭(よ)り、細浪を窺えば、
雨蕭蕭。 雨蕭々たり。
花は柳の枝に映えて、
のどかにかげを、みどりの浮草の泛ぶ池のおもてに落としている。
さて、欄干にもたれかかって、池のさざなみを覗いてみると、
さめざめと雨が降っていた。
その春雨の中を、
「それじゃあ、おいらは行くぜ」
そう言って、あのひとは去っていったのだ。
近来音信両疎索、 近来、音信両(ふた)つながら疎索、
洞房空寂寞。 洞房むなしく寂寞たり。
掩銀屏、垂翠箔、 銀屏を掩い、翠箔を垂れ、
度春宵。 春宵を度(わた)らん。
このごろは声を聞くことも手紙の来ることもどちらも無くて、
奥まった寝室は、むなしくさびしい。
銀の屏風で囲われて、みどりのすだれを垂れたまま、
ひとり、春の宵を過ごしている。
これはふられたんだね。
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唐・温庭筠「酒泉子」一(「酒泉の町から来たあの子」の歌の節で、その一)(「花間集」より)。こんな詞をつくって花街の女たちにちやほやされていたのでは、士人たちに批判されても致し方ありますまい。