「さいちがりん十(臨終)、死ぬるこころが、死なぬこころ仁(に)してもらう、なむあみだぶ仁(に)してもらう」(妙好人浅原才市道歌)
また明日も出勤。もう虚空に帰りたいだよ。
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紀元三世紀ごろだったかと思いますが、今のインド・カシミールに罽賓(けいひん)という国がありました。国王は敬虔な仏教徒で、教団の長である獅子尊者さまを敬愛しておられた。
その国にふたりの魔道士(「外道」)がおりましてな、こやつら、
学諸幻術。
もろもろの幻術を学ぶ。
いろんな魔法を学び知っていた。
ある日、二人はしめし合わせて、
偽為釈子、盗入王宮。
偽りて釈子と為り、盗んで王宮に入る。
仏教徒に化けて、王宮に忍び込んだのであった。
見つかったときに、仏教徒に責任を押し付けようとの魂胆。財物を盗んだだけでなく、もちろん妃がたにもいろいろといたずらをいたしましたそうにございます。へっへっへ。
王さまは王宮に仏教徒が入って財物を盗み、妃がたにエッチないたずらをしていったと聞いて、激怒した。
王怒、破毀伽藍。仍自秉剣、謂祖云、師得薀空否。
王怒り、伽藍を破毀す。よりて自ら剣を秉りて、祖に謂うて云う、「師、薀の空なるを得しや否や」
王さまは激怒されまして、仏教徒の集まる寺院を破壊しました。そして、自ら剣を手にして、尊敬する獅子尊者に詰め寄り、尊者に問うた。
「師よ、あなたは存在しているものが実は空虚であるということに気づいておられるか?」
祖云、已得薀空。
祖云う、「已に薀の空なるを得たり」。
尊者は冷ややかにお答えになった。
「わたしは、存在しているものが実は空虚であるということにすでに気づいている」
云、離生死否。
云う、「生死を離れしや否や」
さらに問う「あなたは生死の区別をもはや離脱しておられるか?」
尊者、答える、
已離生死。
「已に生死を離れたり」
「わたしは、生死の区別をすでに離脱している」
「では」
王は言った、
可施我頭。
「我に頭を施すべきか」
「わたしにあなたのこうべをいただきたいが、いかがか?」
尊者、答える、
身非我有、豈況于頭。
「身、我が有にあらず、あに況や頭においておや」
「からだなどわたしの持ち物ではありません。頭ごときはもちろんのことです」
そう言って尊者は首を伸ばして、斬りやすいようにしてやった。
王即揮刀、白乳涌丈余、王之右臂尋亦堕地。
王すなわち刀を揮うに、白乳涌くこと丈余、王の右臂ついでまた地に堕つ。
王がただちに刀を振って(尊者の頭を斬り落とすと、)そこからプシューと白い乳液が数メートルの高さまで噴き出し、王の刀を握っていた右腕も、ぽろりと切れて落ちてしまった。
「うわあ」
王は倒れた。侍臣たちは王を介抱しつつ、その右腕を拾って王宮に引き上げた。
尊者の首からはなお乳液が噴き出し続けて、
七日而終。
七日にして終わる。
七日経ってようやくおさまった。
逃げ出していた仏教徒たちが集まって来て、尊者を荼毘に附した。王宮では多くの高名が医師たちが呼ばれたが、王の右腕がつながることはなかった・・・という。
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わーいわーい、獅子尊者がカッコよく、また尊者の首が七日にわたって白乳を噴き出す猟奇的シーンに心惹かれて、ご紹介させていただきまちたー。
「聯灯会要」巻第二より。おいらたちもこんなふうにカッコよく、首を延べたいものでございまちゅね。
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