なぜ心ゆくまで食うことが許されないのか。
今日も思ったほど食べてないのに、じわじわと体重増えた。
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昨日と同じ段文昌さまのエピソードより。
段文昌は広陵の瓜洲というところに仮住まいしていましたが、若いころからすでに両親も無く、
家貧力学。
家貧しくして学に力(つと)む。
貧乏であったが、(上昇志向があったので)一生懸命勉強していた。
ある夏の日、
訪親知於城中、不遇、饑甚。
親知を城中に訪ぬるに遇わず、饑甚だし。
街中の知り合いの家を訪ね(て食べ物を恵んでもらおうとし)たが、留守で会えず、帰り道、腹が減ってしかたがない。
このとき、天の恵みであろうか、
於路中拾得一銭。
路中に一銭を拾得す。
道で一銭のお金を拾ったのであった。
大喜びで、
道傍買瓜、置於袖中。
道傍にて瓜を買い、袖中に置く。
みちばたの露店で瓜を買って、これを袖の中に入れた。
「おれはいま、十分な食い物を持っているんだなあ」
と思うと、なんだかゆとりができて、シアワセである。
至一宅、門闃然。
一宅に至るに門闃然(げきぜん)たり。
とある家の前を通ると、門の中は「しーん」として人の気配が無い。
「よし、ここでゆっくりと味合わせていただこう」
と門から入り込み、
入其厩内、以瓜就馬槽破之。
その厩内に入り、瓜を以て馬槽に就きてこれを破る。
(馬のいない)馬屋があったので、そこまで行って、馬の飼い葉桶があったから、これに瓜をぶつけて割った。
中から水気をたっぷり含んだ香ばしいにおいがする。
「うっしっしー! いただきまーす」
方啗次、老僕聞撃槽声、躍出、責以擅入厩。
まさに啗(くら)わんとする次(とき)、老僕、槽を撃つ声を聞きて躍り出で、責むるに擅(ほしい)ままに厩に入るを以てす。
口をあけて食らいつこうとした、まさにそのとき―――、その家の下男らしいじじいが、飼い葉桶を叩いた音を聞きつけたらしく、奥から飛び出して来て、
「おまえはなにものじゃ! 勝手にひとさまの家の馬屋にまで入り込みおって!」
と怒鳴りつけてきた。
「ご、ごめんなさい!」
段は、
驚懼、棄之而出。
驚き懼れ、これを棄てて出でたり。
びっくりし、またコワくて、瓜を棄てて逃げ出した――――。
「あの時の瓜が、今も惜しくてならんのじゃよ」
と、後に出世して節度使になってからも、ことあるごとに言っていたそうである。
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宋・王讜「唐語林」巻六より。若いころの貧乏自慢は楽しいからね。老いてからの貧乏はツラいが。