平成28年9月3日(土)  目次へ  前回に戻る

夏が終わりました。さて、この秋は、いったいどこに流れて行こうかねえ・・・。

また南の海から台風が来ているそうです。このフの台風でだいぶん弱っている土砂などが危険では・・・。おいらもいよいよ身心への多年にわたる弾圧に耐えられなくなってまいりました。そこでそろそろ身を隠さねばならないのだが・・・

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ちょっと切ないのを。

記得那年花下、 記し得たり、那年の花下、

深夜、     深き夜、

初識謝娘時、  初めて謝娘を識りし時、

水堂西面画簾垂、水堂の西面、画簾垂れ、

携手暗相期。  手を携えて暗に相期せしを。

 忘れられないのだ。あの年、花の下で、

 夜も更けて、

謝娘(※)と初めて知り合ったとき―――

水べの部屋の西側の、飾りあるすだれが垂れていたのに隠れて、

手を握って、そっと未来のことを誓いあったことを。

※の謝娘(しゃじょう)は「謝家のお嬢さん」の意ですが、チャイナの詩詞では恋人の女性を呼ぶ一般名詞と化しています。「あなた」とか「あのひと」と訳してしまってもいいコトバ。

惆悵暁鶯残月、 惆悵(ちゅうちょう)たり、暁鶯の残月に、

相別。     相別る。

従此隔音塵、  これより音塵を隔て、

如今倶異郷人。 如今、ともに異郷の人なり。

相見更無因。  相見るにさらに因無し。

 悲しくツラかった。残んの月にウグイスが鳴く夜明けがた、

 二人は別れたのだ。

 それからはウワサばなしさえも聞くこと無く、

今となっては他国のひととなってしまった。

もう一度会えるという手立てはさらさら無い。

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唐・韋荘、字・端己「荷葉盃」詞でございます(「花フ集」所収)。たいへん哀切窮まる恋闕詞(いないひとを恋するタイプの恋うた)でありますので、「古今詞話」では、韋荘が前蜀の皇帝に愛人を奪われ、その苦しみを歌ったのだ、とまことしやかに伝えております。

・・・そうか、異郷の人となれば探されることもないのか。ただの行方不明よりも海外亡命の方が効果あるのカモ。うっしっし。

 

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