今日も暑かった。シャワーや冷房が欲しいときに何人も面会にしきたら、精神的にも追い込まれるでキュッパ。
本日はなんと、銀座にて岡本全勝さん、同業者の間では案外有名なYTさんを囲んでお話を聞き申し上げた。ドゥルティエ類美味しうございました。
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斉の淳于髠(じゅんう・こん)が、
一日而見七人於宣王。
一日にして七人を宣王に見(まみ)えしむ。
一日の間に、七人の人材を推薦して、宣王さまに面接させた。
斉の宣王の在位は、前319年〜前301年になります。
その日の日程が終わると、王さまは淳于髠を呼び出した。
子来。
子、来たれ。
「先生、どうぞこちらへお見えください」
と王さまは丁寧ではありますが、むすーとしておっしゃった。
「先生、わたしは次のような古人のコトバを知っております。
千里而一士、是比肩而立。百世而一聖、若随踵而至。
千里にして一士あるも、これ比肩して立つなり。百世にして一聖あるも、踵(きびす)に随いて至るがごとし。
(賢者は非常に得難いものであるから、)一人の賢者ともう一人の賢者が千里離れて暮らしていたとしても、(賢者の存在確率からすれば)肩をならべて立っているぐらい近いものなのである。(また、聖人は滅多に出現するものではないから、)一人の聖人が出たあと百世代二千年ぐらいしてから次の聖人が出現したとしても、(聖人の存在確率からすれば)前の聖人のかかとにひっついてまた出現した、というぐらい間隔を置いていないものなのである。
と。
ところが、
今、子一朝而見七士。則士不亦衆乎。
今、子は一朝にして七士を見えしむ。すなわち士なるものまた衆(おお)からずや。
今日、先生は午前中だけで七人もの賢者に面会させてくださった。賢者というものはこんなに多いものだったのですかなあ」
イヤミです。
―――使えそうにも無いやつを推薦してきているのではないか。
とあてこすっているのです。
淳于髠、答えて言った。
「はてさて困ったものでございまちゅなあ。臣は次のようなコトバを聞いておりまちゅる。
鳥同翼者而聚居、獣同足者而倶行。
鳥は翼を同じうする者にして聚居し、獣は足を同じうする者にして倶(とも)に行く。
鳥は同じ種類ものどうしで集まっているものであり、ドウブツは同じ種類のものどうしで行動をともにする。
と。
柴胡(さいこ)や桔梗(きちこう)という薬草は、これを湿地に探しに行っても親から子、孫の代まで探し続けても一株も得ることができますまい。しかし、山中の日蔭で降雨量の少ないところに探しに行きますと、たちまちの間に荷車に載せきれぬほど集まりまちゅ。
夫物各有畴也。
それ、物はおのおの畴(たぐい)あるなり。
まあ、存在するモノには、それぞれ仲間があるのでございまちゅる。
髠賢者之畴也。王求士於髠、譬若挹水於河、而取火於燧也。髠将復見之、豈特七士也。
髠は賢者の畴なり。王の士を髠に求むるは、たとえば水を河に挹(く)み、火を燧に取るがごとし。髠はまさにまたこれに見えしめんとすれば、あに特(ただ)に七士ならんや。
この髠めは、賢者の一種でございまちゅからなあ。王さまは、この髠めに、賢者を推薦するよう求めておられると思いまちゅが、それは黄河から水を汲み、火打石から火を点けるようなもの、どれだけ汲み、点じても限度はございません。(なぜならおいらは賢者なので、それに類する者がおいらのところに集まってくるんでちゅなあ)
髠はこれから、さらに賢者をお薦めしていこうと思っておりまちゅ。この七人で済むはずがございませんよー。
うっしっし」
「そ、そうか。心強いことであるのう」
宣王は(うんざりしたように?)頷かれたということである。
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「戦国策」(巻四・斉上)より。最近よく岡本全勝さんにお会いするので、もしかしたらわたくしも同じ畴(たぐい)なのかも知れません。誰かエラいひとに推薦してもらえるカモ。