グエ、グエ、グエ、かえるうた〜。我もカエルのごとく、暗い雨の中に生きるしかないのだ。シゴトがあるうちは。
前回の更新がずっと昔のような気がするが、今日もあの日と同じくツラい一日で、明日もツラいと目に見えているのも同じである。どこにも明るい場所に出る道はない。
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なんとかならないものだろうか。あるいはだれかなんとかしてくれないものだろうか。
・・・むかし、ずっとずっと西の方の国に、オウムがおりましたそうです。
あるとき、自らの住む山を出て、別の山に飛び至ったところ、
山中百鳥畜獣、転相重愛、不相残害。
山中の百鳥畜獣、うたた相重愛し、相残害せず。
この山の中では、各種の鳥やケモノたちが、お互い同士たいへん敬重し愛し合って、お互いに殺し合うことが無かった。
生きるためにコロしあわなければならないはずのドウブツたちが愛し合っていたのです。なんという素晴らしい場所であろうか。
この山、書中に名前は書いてないのですが、便宜上、仮に「ポータラカ」とします。
オウムはこのポータラカ山中に楽しく暮らしていたが、
雖尓、不可久也、当帰耳。
しかりといえども、久しかるべからざるなり、まさに帰るべきのみ。
「すばらしいところだが、いつまでも長くいるわけにはいかぬ。そろそろもとの山に戻ることにしよう」
と思い立ちまして、自分の山に帰った。
オウムは自分の山の中で、ほかの鳥やドウブツたちにポータラカ山の話をし、多くの鳥やドウブツは「ふふん」と鼻で笑って相手にもしなかったが、少しの鳥やドウブツは感心して「自分もできるだけほかの鳥やドウブツたちと仲良くしよう」と思うようになった。オウムは少しづつでもそういう鳥やドウブツを増やして行こう、と毎日説教していたのであった。
それから数月の後のことである。
このポータラカ山が火事になった。
四面皆然。
四面みな然(も)ゆ。
山全体が燃え上がったのだ。
そのようすは遥かな遠くからも見てとれた。
オウムは、自分の山からポータラカの様子を見て、
便入水以羽翅取水、飛上空中、以衣毛間水瀉之、欲滅大火。
すなわち水に入りて羽翅を以て水を取り、飛びて空中に上り、衣毛間の水を以てこれに瀉ぎて、大火を滅せんとす。
すぐに水に飛び込んで、自分の翼や羽に水をつけ、次いで空中に飛び上がってポータラカ山の上まで行き、羽毛の間の水を火にそそいで、大火事を消そうとした。
このようにして、何度も行き来を繰り返した。
さてさて。
これを見ておりました天の神さま、おっしゃられますには、
咄。鸚鵡、爾何以痴。千里之火、寧為爾両翅水滅乎。
咄(とつ)。鸚鵡、爾、何を以て痴なる。千里の火、なんぞ爾の両翅の水の滅するところならんや。
「ばーか、ばーか。オウムちゃん、おまえはどうちてそんなにおバカなのでちょう。千里にもわたる大火事を、どうしておまえの二枚の翼の間につけた水で消すことができまちょうか」
これに対し、オウムは息を切らせながら答えました。
我由知而不滅也。我嘗客是山中、山中百鳥畜獣皆仁義、悉為兄弟。我不忍見之耳。
我よりて知る、滅せざるなり。我かつてこの山中に客たりて、山中の百鳥畜獣みな仁義にしてことごとく兄弟たり。我、これを見るに忍びざるのみ。
「わたしにももとより、これで火が消せるはずがないとわかっております。しかし、わたしは以前このポータラカ山中に旅住まいをしておりましたが、この山中のいろんな鳥やケモノはみな慈愛と正義を有し、すべて兄弟のように暮らしておりました。(いまその兄弟たちが焼けようとしているのです。)わたしは何もせずに見ているだけでは耐えられなかったのです」
「なるほどでちゅなあ」
天神感其至意、則雨滅火也。
天神その至意に感じ、すなわち雨ふらして火を滅せり。
天の神さまはオウムの思い詰めたキモチに感動しまして、そこで雨を降らせてポータラカ山の火事を消しとどめたのでありました。
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と、呉・天竺三蔵康僧会訳「雑譬喩経」上に書いてありました。
誰かこのオウムのようにわたしを救いに来てくれないものか。そうすれば天の神さまが感動してわたしの周囲のもの―――人もシゴトも―――全部燃やし尽してくれるかも知れないのに・・・。オウムが来ないからいけないのだ。オウムめ、恨んでやる、恨んでやる・・・。
―――というぐらい、おいらはギリギリのところまで追い込まれてきていまちゅよー!