自由権を主張して郷里に隠棲しました。
そしてひとりさびしく晩年を過ごしております。
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じゃんじゃんじゃーん。(←お話のはじめを告げるドラの音)
話す相手もおりませんので、独り言のように昔話をいたしますぞ。
漢のころ、長安の渭橋の下に陰生というコドモの乞食が棲んでおりました。
このコドモ乞食は、
常于市中丐、市中厭苦。
常に市中に丐し、市中厭苦す。
いつも人通りの多い市場の中で乞食をしているので、市場のひとたちは迷惑していた。
ある日、あるひと、
「おれがとっちめてやる」
と
以糞洒之。
糞を以てこれを洒(あら)う。
陰生にウンコをぶっかけたのであった。
「うわーい、きたない。ひどいことをちまちゅね」
と陰生はどこかに逃げて行きました・・・が、
旋復在市中乞、衣不見汚如故。
旋(ただ)ちにまた市中に在りて乞うに、衣の汚れを見ざることもとの如し。
あっという間も無くまた市場に戻ってきて乞食を始めました。不思議なことにさっきウンコのついたはずの服がもうきれいになっています。
これを見ていた市場の監督官(長吏)は
「こやつはどうも不思議だぞ」
と怪しんで、
「逮捕するぞ」
械収繋、着桎梏。
械収して繋(つな)ぎ、桎梏を着す。
捕らえて、牢屋に入れ、手かせと足かせをつけた。
「うわーい、何をするんでちゅかな」
「うるさい、あとできつく取り調べてやるからな」
と・・・一瞬目を離した瞬間に、もういなくなっておりました。
「ま、まさか・・・」
と市場に戻りますと、陰生は
続在市乞。
続けて市に在りて乞えり。
市場に戻って、引き続き乞食をしておりました。
監督官が
「これはいかん、次は捕らえたらすぐにコロさねば・・・」
と考えているうちに、
乃去。
すなわち去れり。
もうどこかに行ってしまい、姿は見えなくなってしまった。
そして、
洒之者家、屋室自壊、殺十数人。
これを洒える者の家、屋室おのずから壊れ、十数人を殺す。
ウンコをぶっかけたやつの家では、屋根が自然に落ちて部屋が潰れ、一族十数人が死んでしまったのであった。
そのころ、しばらく長安中で流行った歌―――
見乞児、与美酒、以免破屋之咎。
乞児を見ば、美酒を与えよ、以て破屋の咎を免れん。
コドモの乞食がおりましたらば、すてきなお酒をあげましょね。おうちを壊されないように。
これでおしまい。
じゃじゃーん。(←お話の終わりの合図のドラの音)
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「捜神記」より「乞児陰生」。おいらもあんまりイジメていると、仕返しするカモよ。