ネズミなら食べたニャア。
木偶人形のやつ、今日は職場でいろいろあったようで先ほど帰ってきてぶつぶつ言っておりました。
木偶のくせにシゴトの文句を言うとは怪しからん。わしはまた木偶に教え諭してやった。
「よいか、家の中でずっとゴロゴロしていたいかも知れんが、世の中にそんなうまいことなどないのだぞ・・・」
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上虞の魏虔祖の家に皮納という名の侍女がいて、美人で機転が利くので出入りしている士人たちの間では人気者であった。特に徐密という青年、彼女をからかっては楽しんでいた。
ある晩、その女が
就密宿。
密の宿に就く。
徐密の宿舎に忍んでやってきた。
そして、密と床をともにしようとするのである。
「うひゃひゃ」
すばらしいことである。しかし徐密は常識的な人間であったから、
「こんなにうまいことがあるものなのか?」
と
心疑之。
心にこれを疑う。
心の中で疑問に思った。
そこで、
以手摹其四体。
手を以てその四体を摹(も)す。
手で、女の腕や脚を撫でてみた。
そうしましたところ、なんと
便覚縮小、因化為鼠而走。
すなわち縮小するを覚え、因りて化して鼠と為りて走れり。
どんどん小さく縮んでいくように感じた。さらに撫でていると、変化してネズミとなり、逃げて行ってしまった。
なのだそうでチュウ。
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南朝宋・劉義慶「幽明録」より。
「・・・ということがあったのだ。世の中うまくいくものではないのだぞ」
と教え諭してやったら、木偶のやつ、恨みがましそうにわしの方を睨みすえおった。怪しからんことに、木偶の分際でわしにたてつく気なのか・・・。