平成27年4月30日(木)  目次へ  前回に戻る

「どろん」と消える。この世から?

―――わたしがいない間にこのHPを更新している、おまえは誰だ?

とうとう見つけたぞ、おまえは―――わたしの影なのか?

ええい、おまえなど消えてしまえ! 

わたしのプラスとおまえのマイナス、交わればゼロに変じて、より強い方が生き残るのだ!

ビビビビビビ・・・・・

どっかーーーーん!!!!!

ぐわっーー!

・・・やった。消えた。やつは消えたぞ。

・・・・・・・・・・・・・・・

さて、「消える」といいますと、これは唐の元和年間(806〜820)のことなのでございますが、太原(山西)の節度使・王鍔之が朝廷の脅威となっておりましたころ。

王鍔之の本陣でのこと。

一日亭午、有小吏見一神人。

一日亭午、小吏の一神人を見る有り。

ある日のちょうど正午の時分、小役人の一人が、「神秘のお方」を目にした。

そのお方は、

長丈余、介金仗剣、自衙門緩歩而来。

長(たけ)丈余、金を介し剣を仗し、衙門より緩歩して来たる。

背丈は2メートル以上、黄金のぴかぴかの鎧を着け、剣を帯びて、役所の門からゆったりと歩いて入ってお見えになったのである。

そして、

佇立久之、若有所伺。

佇立これを久しくして、伺うところ有るがごとし。

役所の中庭まで来て、しばらくの間たたずんだままで、何か様子を見ているようであった。

「あわあわわ」

小役人はこのお方の姿を見て、

懼甚、白於衙将。

懼るること甚だしく、衙将に白(はく)せり。

大いにびびりまくり、警備の将校にこのことを告げた。

「し、「神秘のお方」がお見えに―ーー!」

「何を言っておるのだ」

警備隊の靳坦(きんたん)、張和という二人の隊長、半信半疑で出て来て、

偕視之、如小吏言。

ともにこれを視るに、小吏の言の如し。

二人ともに、小役人の言うとおり、「神秘のお方」がおられるのをその目で見た。

「むむ! た、確かに「神秘のお方」じゃ」

「いったい何の御用でお見えになられたのか?」

と言っているうちに、

俄有暴風起、因忽不見。

にわかに暴風起こり、因りて忽ち見えず。

突然にわかに烈しい風が吹き起こって、砂埃で何も見えなくなってしまい、ようやく風の已んだときには、もうそのお方の姿はどこにも無かった。

「き、消えた?」

「いずこへ?」

二人は茫然と立ちすくむばかりであったという。

後月余而鍔薨。

後、月余にして鍔薨ず。

その後ひと月あまりして、王鍔之は死亡した。

おそらくその前触れであったのであろう。

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唐・張讀「宣室志」巻二より。この「お方」は、きれいさっぱり消えたのですね。

さて、ところで、プラスとマイナス、消え残ったおいらは、どちらの肝冷斎だと思いまちゅか?

 

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