←本文とは何の関係もありません。ニンゲンのドレイと化したドウブツの図。
会社帰りビール飲んで地下鉄でひと眠り。終点まで行って帰ってきた。何やらよい夢をみていたような・・・。
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夢のようなとりとめのないお話。
晋の時代、南陽に趙侯という男がいた。
姿形悴陋、長不満数尺。
姿形悴陋にして長は数尺に満たず。
外見はみじめで醜くく、背丈は一メートルも無い。
そんなひとなのですが、不思議な術をいくつも使うのであった。
例えば
以盆盛水、閉目吹気作禁、魚龍立見。
盆を以て水を盛り、閉目して気を吹きて禁(まじない)を作せば、魚龍たちどころに見(あら)わる。
お皿に水を張って、その前で目を閉じ、(水面に)「ぷう」と息を吹きかけて、なんやら呪文を唱えると―――ああッ!不思議にも魚や龍がその水中に見えるのであった。
ある時、趙侯の家の米櫃がナニモノかに齧られ、その穴からコメが食い取られたことがあった。
「怪しからぬな。よりによってわしの家のコメを食らうとは。バカにしおって・・・」
趙侯は
披髪持刀、画地作獄、四面開門、向東長嘯。
披髪して刀を持ち、地を画して獄を作りて四面の門を開き、東に向かいて長嘯す。
髪をざんばらにして手に刀を持つと、地面に四角く線を引いた。
「ふふふ、ここが「獄」じゃ。次に門を開けるぞ」
その「獄」の四辺の真ん中にそれぞれ刀で切れ目を入れた。これが「門」らしい。
そして東の方を向くと、低く口笛を吹き始めた。その音、不気味に長く続く。
やがて、その口笛の音に誘われるように
群鼠倶到。
群鼠ともに到れり。
多数のネズミが集まってきた。
それらは、ふらふらと、地面に画かれた「獄」の中に「門」から入り込んだ。あまりに数が多いので、びっしりと隙間もなく密集したのであるが、地面の線から外に出ようとするものは一匹もいない。
趙侯、なにやらマジナイの言葉を唱えてから、「獄」の上の何も無い空間に向かってそこにいる「何か」に命じるように言う、
凡非噉者過去、盗者令止。
およそ噉(くら)わざる者は過ぎ去れ、盗みし者は止まらしめよ。
「すべて、我がコメを食わざるものは去らしめよ。我がコメを盗みしものはここに止まらせよ」
と。そして、刀で「獄」の上の虚空を切った。
瞬間、ぱっと密集が崩れ、ネズミたちは思い思いに四方に散った―――が、
止者十余。
止まるもの十余あり。
十数匹だけが「獄」の中に残っていた。
のこったネズミたちはもう覚悟したものか、あるいは「まじない」のせいなのか、動かない。
「ふふふ、わしを、このわしをないがしろにした罰じゃ・・・」
と口元を緩めながら趙侯は、刀を使って、動かないネズミを一匹一匹ひっくり返し、その腹を割いた。
剖腹看臓、有米在焉。
腹を剖きて臓を看るに、米の在る有り。
開かれた腹の中、内臓からは、死にきらぬネズミが痙攣するごとに、まだこなれていないコメがぽろぽろと零れ落ちてきた。
というのである。
そのほかにもまだすごいことをやっているのです。
しかし、肝冷おじちゃんは明日もシゴトなのでもう寝ます。よゐこのみなちゃんが大人しくしていたら、明日も趙侯おじさんの活躍の続きを教えてあげまちゅからねー。次のお話ではネズミではなくニンゲンを・・・うひひひひ〜!
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南朝宋・劉敬叔「異苑」巻九より。