ホッホー。
毎日暑い中、みなさんご苦労さまです。わたしは山中に静かに暮らしているので、あまり暑くはありませんのじゃ。
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そのわしの庵の中へ、ばたばたばた、とフクロウが飛び込んできました。
「なんですかな、騒がしい」
とたしなめますと、
「ホッホッホー、肝冷斎よ、久しぶりじゃな」
「なんと、おまえさんか」
このフクロウはわたしの古い友人の老フクロウ・ホッフさんであった。
その先祖は漢の時代に賈誼の部屋に飛び込んだので名高いフクロウ・ホッホさまである、という、由緒正しいフクロウなのである。
賈誼は若くして博学を以て名を知られ、王佐の才ありといわれた秀才でしたが、文帝の側近たちに忌まれて、長沙王の傅(ふ。お守り役。いろいろと指導する先生でもある。ここでは「師」と訳しておきます)として長江中流の長沙に追いやられたひとであった。
賈誼為長沙王傅三年、有鵩鳥飛入誼舎、止於坐隅。
賈誼、長沙王の傅たりて三年、鵩鳥(ふくちょう)の飛びて誼の舎に入り、坐隅に止まること有り。
賈誼が長沙王の師となってから三年経ったある日、フクロウが賈誼の官舎に飛び込み、部屋の隅っこに止まった。
「ホッホ、こんばんは」
賈誼は大学者ですから、いろんなことを知っている。
―――これはフクロウという鳥である。フクロウは不祥の鳥、まがごとの兆しとなる鳥だ。
誼既以謫居長沙、長沙卑湿。誼自傷悼、以為寿不得長。
誼、すでに以て長沙に謫居するに、長沙は卑湿なり。誼、自ら傷悼して、以て寿の長きを得ざるなり、とす。
賈誼は長沙の地に飛ばされて住んでいるのであるが、この長沙の地は低く、湿気がひどい。誼は自分で「(不祥の鳥フクロウが部屋に入ってくるとは、)どうやらわたしの寿命は長くないようだな」と悲しんだのであった。
「ホッホ、何をぶつぶつ言っているのじゃろう」
賈誼はここにおいて、鵩鳥の賦(「フクロウのうた」)を作って曰く、
―――木星が卯に宿る年(文帝六年(前174))、四月は夏の初め、庚子の日斜めに傾くころ、フクロウがわたしの官舎にやってきた。
止于坐隅兮、貌甚閑暇。
坐隅に止まりて、貌ははなはだ閑暇なり。
部屋の隅っこにじっと止まっているが、その容貌、はなはだのんびりとしている。
「ホッホー、当たり前じゃ、わしにはせわしなくする理由など無いからな」
異物来萃兮、私怪其故、
発書占之兮、讖言其度。
異物の来萃すれば、ひそかにその故を怪しみ、
書を発(ひら)きてこれを占い、その度を讖言せんとす。
普段見かけぬドウブツが来たので、これは何故であろうかと疑い、
書物を開いて占いを立て、この「しるし」から未来のことを読み解こうとした。
すると―――
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続きが気になるところですが、昨日、更新中に「新しいプログラムが入った」といってPCが勝手に起動した際、「観タマ記目次」のリンクをすべて外してしまったようです。外すのは機械の妖しき力で一度に外せるでしょうが、リンクをつなぎ直すのはすべて人力。それだけで一時間近くかかってしまい、しかも明日は内臓を検査する日なのでいろいろクスリ飲まないと・・・、という状況ですので、今日はここまで。明日もし万が一、病院から帰ってこれたら、続きを書きます。万が九千九百九十九は残念ながら・・・。
「文選」巻十三より。