←元気だったころの肝冷斎3号(想像図)
8号です。わずか一日でもうだめになってきている。
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何代か前の肝冷斎(2号か3号ぐらいであろうか)が読んでいたと思しき「太平廣記」巻463の中に、「名著!感動!」と書き込みのある一条がございました。
読んでみます。
真臘国有葛浪山、高万丈。
真臘国に葛浪なる山有り、高さ万丈なり。
クメールの国に葛浪(かつろう)という山がある。山の高さは一万丈、というから、18000メートルぐらいある。
この山の中腹に洞穴があって、ここに
先有浪鳥。
先に浪鳥有り。
以前、浪鳥という鳥が棲んでいた。
この鳥、
状似老鴟、大如駱駝。
状は老鴟(し)に似、大は駱駝の如し。
「鴟」(シ)は「とび」「みみずく」「みそさざい」のどれか、ですが、本来一字で使うときは「とび」だと思いますので、「とび」と訳します。
すがたは年老いたトビに似ているが、その大きさたるやラクダほどもあった。
この鳥は、
人過、即攫而食之、騰空而去。
人過(よ)ぎれば即ち攫(さら)いてこれを食らい、空に騰がりて去る。
山の麓を人が通り過ぎるのを見かけると、たちまち空から降りてきてこれを摑み、すぐに空高く昇って逃げ去ってしまう。そして捕らえた人を食べるのである。
ニンゲンは美味しいのでしょうね。
ひとびと、この鳥にたいへん苦しんだ。
そこで真臘(クメール)の王さまに「おたすけください」と頼み込んだ。
真臘王取大牛肉、中安小剣子、両頭尖利。
真臘王、大牛肉を取り、中に小剣子の両頭尖利なるを安んず。
クメール王は巨大なウシの肉を取り寄せ、その中に両側にぎとぎとの切っ先のある剣を埋め込んだ。
そして家来の一人に、
「これ、おまえ、この牛肉をアタマに載せて葛浪山の下に行ってまいれ」
と命じた。
「え? え? あっしが?」
とイヤです。食べられるかも知れませんから。しかし王さまの命令なので断るとコロされますから、
「わ、わかりやした」
と従わなければなりません。
こうして、
令人載行。
人をして載せ行かしむ。
その人にアタマに牛肉を載せて、山の下を行かせた。
果たして、途上で空に大きな影が現れました。
「出たーーー!出ましたよーーー!」
その人、逃げようとしますが、鳥は空から狙いをつけていますから、どちらに逃げたらいいかもわからない。その場にたちすくむうちに、ざざざーーーとそれは風の音をさせて降りて来まして、
「うひゃー」
鳥攫而呑之。
鳥攫いてこれを呑む。
鳥は飛んできて、アタマの上に載せられていた牛肉をつかみ、それを一のみに呑み込んでしまった。
「お、うまくいった?」
鳥は咽喉から腹に剣が引っかかって、大いに苦しんでいるようである。くるくると錐揉みしながら崖地に降りて、ばたばたと羽をはばたかせ、一度、二度、と天地も裂けるばかりにけたたましく鳴き叫んだが、
乃死。
すなわち死す。
やがて死んで動かなくなった。
その後、
無復種矣。
また種無し。
その種類の鳥は二度と発見されていない。
されば、彼はたった一羽きりで、長く、孤独に生きていたのであろう。
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唐・張鷟「朝野僉載」に出る話だという。
う〜ん。いったいどこが「名著!感動!」なのかわかりかねます。しかしこれを読んだおかげで、ニンゲンより牛肉の方が美味らしい、ということはわかりました。