やはり、ダメだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
―――こうしてまた一人、肝冷斎を名乗る者が消えていきました。肝冷斎はしごとが苦手なのに、ムリにしごとをさせると段々と力尽きてこんなことになるのです。
ということで、今回のお鉢はわたくし肝冷斎8号に回ってきたようでございます。
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さて、何を書こうかな。
立言亦何容易。
言を立つるは、また何ぞ容易ならんや。
何かを書こうとするのは、またどうして、簡単なことではないのである。
凡庸な文章であればたやすいかも知れぬが、そんなものを書いて人の目に触れさせるのは末代までの恥辱となる。後世のひとにも読ませて恥ずかしくない文章を書くには、
必有包天、包地、包千古、包来今之識。
必有驚天、驚地、驚千古、驚来今之才。
必有破天、破地、破千古、破来今之膽。
必ず天を包み、地を包み、千古を包み、来今を包むの識あり、
必ず天を驚かせ、地を驚かせ、千古を驚かせ、来今を驚かすの才ありて、
必ず天を破り、地を破り、千古を破り、来今を破るの膽あらんのみ。
どうしても、天地を包みこみ、古代からの歴史を包みこみ、さらにこれから未来の事象をも包み込むほどの知識が必要である。
どうしても、天地をびっくりさせ、古代からのひとびとをびっくりさせ、さらにこれから未来のひとびとをもびっくりさせるような才能が必要である。
どうしても、天地をぶち壊し、古代からの文化をぶち壊し、さらにこれから未来の文化をもぶち壊してしまうような肝っ魂が必要である。
というほどの知識、才能、肝っ魂が必要なのだそうでございます。
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こりゃムリな感じ。みなさんも
「肝冷斎8号にはムリだな」
とお思いになりますでしょう。
しかし、
君子不傲人以不如、不疑人以不肖。
君子は人に傲るに如(し)かざるを以てせず、人を疑うに不肖を以てせず。
こういうときの「君子」は「諸君が・・・であることを望む」と読むとわかりやすい、と宮崎市定先生がおっしゃっていたのでそうしてみますと、
みなさん、他人を自分以下だと思って、おごりたかぶってはなりませんぞ。また、他人をはじめから、自分よりダメだろうと思い込んでいてはなりませんぞ。
とも申しますのでございますから、肝冷斎8号にも何かできることはあるかも。
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いずれも明・陸紹珩「酔古堂剣掃」巻八に書いてあったことで、わたしが考えたコトバではありません。もちろん「酔古堂剣掃」は古今の名言・麗句を集めたものですから、陸紹珩本人が考えたコトバでもありませんが。