二月になった。しかし、ああー。ううー。やる気ない。・・・月が替わって少しは上向きになっていくのだろうか。
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阮春光なるひとは至霊州のひとだが、少年を過ぎてから発憤して読書し、官吏登用試験を目指したのであった。
むかしの読書は声を出して読む。彼は熱心に勉強して、
昼夜吚唔不輟、声又雄重、隣里咸為掩耳。
昼夜「吚、唔」として輟(や)めず、声また雄重にして、隣里みな耳を掩うを為す。
昼も夜も「いーー、おーー」と読み上げ続けた。声がまた太くて大きかったので、隣近所はみんな耳を覆って困っていた。
クレームが来たので、
姉遇之、哂曰、确地豈有鰌耶。
姉これに遇い、哂いて曰く、「确地あに鰌有らんや」と。
おねえちゃんが面会して、「ふふん」と見下したように笑いながら言った。
「実りの悪い荒地に、なまずがいるのかしらねえ?」
「ど、どういうことだよ?」
确地=荒れ地、というのは「試験になかなか受からない地域」の意味があります。おねえちゃんは「いーー、おーー」とうるさいのを地震に喩えて、
「試験にも受からない人の住んでいるところに、地震を起こすナマズが住んでいるのかなあ?」
とイヤミを言ったのである。
「く、・・・くそう」
春光は
不顧、読益苦。
顧みず、読むことますます苦なり。
そんな苦情もはねのけて、今まで以上に一生懸命読書した。
その甲斐あって、翌年、都の試験に合格して、進士となった。
既帰、宴親朋。
既に帰り、親朋と宴す。
村に帰ってきて、親類や仲間たちを呼んで祝いの宴会を開いた。
そのとき、
置一大鰌於筵前、謂姉曰、确地無鰌、然有者極大。
一大鰌を筵前に置いて、姉に謂いて曰く、「确地に鰌無し、しかるに有らば極めて大なり」。
巨大なナマズを手に入れて来て、テーブルに置き、おねえちゃんに向かって言うに、
「荒れ地にはナマズはいないんだよ。だけど、いるときは巨大なのがいるんだよ!(おいらは試験に合格するという巨大な成果をあげた人間だぜ!)」
「わはは、よう言うたぞ」
満堂鬨然。
満堂鬨然たり。
建物中のお客さんが、「どっ」と声をそろえて称賛した。
「はいはい、どうもごめんなさいね」
と、おねえちゃんも謝ったということでございます。
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こんなふうにいいことあるといいなあ・・・。越南・阮鼎臣「喝東書異」より。
ああー。ううー。あと三十四時間ぐらいで・・・。