春一番のような風がびゅうびゅうと吹いております。ちょっとコワいぐらい。
さて、アベノミクスです。株が上がってるらしいので、そろそろみなさんもそわそわしてきているでしょうからね、「富貴を得る方法」について教訓話をいたしますぞ。
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唐の陳懐卿は嶺南(広州)のひとであったが、
養鴨百余頭。
鴨、百余頭を養う。
あひる百数十羽を飼養していた。
このあひるたちのうんこを片付けていたところ、
中有光爚爚然。
中に光爚爚(やくやく)然たる有り。
うんこの中に、何やらぴかぴかと光るものがある。
「これは何であろうかのう」
試以盆水沙汰之。
試みに盆水を以てこれを沙汰す。
ためしに、深皿に水を入れて、そこで洗ってみた。
「沙汰」はもともと米を水で洗って土石を取り除くことをいう。「淘汰」と同じ。
すると、うんこちゃんの中から洗いだされて、
得金十両。
金十両を得たり。
数十グラムの黄金を手に入れることができたのである。
みなさんのようなふつうのひとなら
「わあい、もうけた、もうけた」
とその黄金で牛丼何十杯か食って終わりですが(え?自分はちがう?)、陳懐卿は少しは考えるおとこであった。
「もしかして・・・・」
乃覘所食処於舎後山足下。
すなわち所食の処を覘(うかが)うに舎後の山足の下においてす。
やがて、放し飼いになっているあひるたちの後をつけて、餌をついばんでいるところを確かめてみると、裏山のふもとであった。
因鑿有麩金、銷得数十斤。
因りて鑿つに麩金あり、銷するに数十斤を得たり。
そこでそこを掘ってみたところ、砂金が出てきた。これを精錬すると数十キログラムにもなったのである。
「麩」は麦から麦粉をとったカスであり、「ふーちゃんぷる」の元になる「ふすま」のことですが、「麩金」と熟すと「砂金」のことだと「本草綱目」に書いてあった。
「わあい、ぼろもうけやでー!」
みなさんならこの黄金で牛丼数万杯を食べるだけでしょうが(え? そんなことない?)、彼はこれをもとでに巨富を得、後に官を買って梧州の刺史(知事)にまで為ったのであった。
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以上、宋・銭易「南部新書」庚巻に書いてあった。
富貴を得るひとはやはり才覚をハタラかすものなんだなー。勉強になりました。ニンゲン、生きていたらこういうチャンスがめぐってくるかも知れません。みなさんはそのときにいたずらに牛丼を食べて消費してしまうのではなく、智慧をハタラかしてお金持ちになってくださいね。
わたし? わたしはハタラクはしませんよ。たとえ今度の「バブル」でいかにぼろ儲けしたとても、この心臓や血圧や脂肪肝その他の状態では何も楽しめることはないでのう。それより今夜の風の烈しきは何事の予兆であろうか。いよいよ北が核実験するのかな?