いやあ二日間ニンゲンらしい生活してましたわ・・・と思ったらもう明日は月曜日・・・。
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むかしのことにございます。
北谷郡・屋良村の東の山中、
山林尤深遠、岩石甚巍峨、内有一溪潭清澄徹底、深淵万仞。
山林尤も深遠、岩石甚だ巍峨たるに、内に一溪潭の清澄徹底して深淵万仞なるあり。
森の中のもっとも深いところ、巌や岩がごつごつと飛び出たあたりに、清みきって底まで見える谷があった。その深さ、一万仞(18キロメートル)もあろうかというほどである。
深さが一万仞あると日本海溝の底より深くなります。ここは比喩ということで御理解願いたい。
この谷を「無漏溪」と呼んでいた。「無漏」は仏教用語で悟りの境地にあること(漏らすことが無い!)をいう語だが、沖縄方言では「むるち」と呼んだそうであり、「牟婁」や「室生」という本土の地名と共通する地形的特徴(深い谷川の奥、といった)があると推測するべきであろう。
さてさて、この谷には、
一大蛇時時翻波湧瀾放声响喨、或出来上岸、与牛相闘。
一大蛇、時々に波を翻して湧瀾し、声を放ちて响喨たり、あるいは出でて岸に来上し、牛とあい闘う。
一匹の大蛇がおりましたのじゃ。
大蛇はときおり溪谷に激しい波を湧き起こし、おそろしい声で叫ぶのだが、その声はりょうりょうと響くのでありました。時には岸に上がってきて、牛ととっくみあうこともあった。
このヘビ、
半蔵波裏半現雲間、人不知其長也。
半ばは波の裏に蔵し半ばは雲間に現われ、人その長さを知らざるなり。
下半は水の中にあるはずなのに、空の雲の間に上半の姿が見えるのである。どれほどの長さがあるのか、皆目見当がつかぬ。
こんなのと闘う牛がいた、というのもすごいことではありますね。
今(←19世紀)でも、姿は見えなくとも、その谷に波湧きおこり、ごうごうたる音が大いに起こって、
与東海共合响響、必也不閲数日風雨忽起、云爾。
東海と共に合して响響すれば、必ずや数日を閲せずして風雨たちまちに起こる、としか云う。
東の海(太平洋)とともに相響きあうことがあれば、その数日以内に、すさまじい風雨がやってくる、と古老たちは言っている。
のだそうでございます。
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ああオモシロかった。こういうどうでもいい話、好きですわー。「球陽」外巻「遺老説伝」一より。「琉球国旧記」にも所収。読んでいる間はオモシロいけど、ふと正気に戻ると、月曜日がどんどん近づいてくるん。・・・(>_<)