平成24年7月31日(火)  目次へ  前回に戻る

 

見知らぬ地で新しい生活に入った肝冷斎でございます。エアコン無いんです。蛍光灯も無いんです。

という生活の中で、今日はインターネッツを見ていて、新しい住所の近くにスーパー銭湯があるのを発見したので、「よっしゃあ」と当たりくじ引いた感じでしごと帰りに寄ってみました。

・・・ところ、潰れておりました。

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はかないものでございますのう。カネの切れ目が縁の切れ目じゃ。

君不見、         君見ずや、

今人交態薄。      今人交態の薄きを。

黄金用尽還疎索。   黄金用い尽くせばまた疎索なり。

 あなたはご覧になっていないのですか、

 今のひとびとの友との交わりが薄情そのものでありますのを。

 所持していた黄金を使い果たせば、もうつきあいはまばらになってしまうのでございます。

以玆感歎辞旧遊、   玆(これ)を以て感歎して旧遊を辞し、

更於時事無所求。   さらに時事において求むるところ無し。

 このことに思い至ったので、ため息ついてこれまで付き合ってきたひとたちから離れ、

 これ以上は現世のことで求めることは無くなったのだ。

・・・「更に時事において求むるところ無し」とは、肝冷斎の現状そのものですが、別に肝冷斎は黄金をもともと持っていたわけではありませんから、その旧遊のひとたちはもとよりカネのための付き合いではなかったのである。念のため。

且与少年飲美酒、   しばらく少年と美酒を飲み、

往来射猟西山頭。   往来し射猟せん、西山のほとり。

 とりあえず若い衆らと旨酒を酌み交わし、

 お互いに行き来しながら西山のあたりで狩りにでも行こう。

この詩を書いたひとは(肝冷斎などと違い)「お酒」が好き、「若い衆」と仲良し、弓矢の道にも詳しい「まともなひと」なのでございます。

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これは唐の高適(こうせき)の「邯鄲少年行」(邯鄲のまちの若い衆のうた)です(「唐詩選」所収)。

高適は、字・達夫、山東・渤海のひと、李白・杜甫らと親しく、辺塞派といわれ、悲壮豪快な詩を以て名高いのでございます。彼ら一派としては珍しく出世して節度使にまでなったが、若いころは無頼の仲間に入り、壮年になってからも役目のことに失敗して何度も左遷されているのですが、それでもかなり偉くなったのはやはり明るくて鷹揚で、どう考えてもどこかおかしい李太白先生や、独りよがりで口うるさい杜少陵などと違い、人間がまともだったからなのでございましょう。

 

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