どうするどうするどうする〜、明日からふつうの日だよー! 仮病使って休むかないかも。しかし・・・・
・・・・・・・・・・・・・
唐の王玄英、西域に侵入し、中天竺の王・阿羅那順(アーラナジュン)を捕虜にして、長安に凱旋してまいった。
この捕虜の中に、術士の那羅邇婆(ナーラージーバ)というものがおり、
言寿二百歳。
言う、寿二百歳なり、と。
「わしは二百年生きておるんじゃ」
と言うのであった。
太宗皇帝、たいへん興味を持たれ、離宮に彼の研究所を設け、兵部尚書・崔敦礼に監督させて不老長生の薬を作らせることにした。
さて、この那羅邇婆(ナーラージーバ)のいうには、
「不老長生薬を作るのにはわけもない。現にこのわしがそれを使って200歳まで生きているのじゃからな。ただ、薬を作るためには、二つの原料が必要なのじゃ」
崔敦礼がどのような原料が必要なのか問うたところ、那羅邇婆答えていうに―――
その一は、天竺の婆羅門国に産する「畔茶佉」(パンチャーキャ)と呼ばれる液体である。
この液体は、山中の石の窪みの中に蓄えられ、七つの色に変じ、あるときはたいそう熱く、あるときはたいそう冷たい。そして温度に関わらず、
能消草木金鉄。
よく草木金鉄を消す。
草・木・金属類を溶かしてしまう。
のである。もちろん、
人手入則消爛。
人手入らばすなわち消爛す。
人が手を入れると、たちまち手もただれ溶けてしまうのだ。
この液体を手に入れようとするときは、まずラクダの骨を沈める。(おそらくそれが中和剤になるのでしょう、)それからヒョウタンに汲むと汲み取ることができる。
また、この液体の近くには必ず
有石柱似人形守之。
石柱の人形に似たるありてこれを守る。
人間のような形の石の柱がある。ひとびとはこれが液体の守り神なのだ、と言う。
から、これが目印になるであろう。
その二は、「咀頼羅」(ソライラ)という植物性の物質である。
「これは高山中の石崖の下において発見することができるんじゃ。
山腹中有石孔、孔前有樹、状如桑樹、孔中有大毒蛇守之。
山腹中に石孔あり。孔前に樹の状の桑樹の如きありて、孔中に大毒蛇これを守るあり。
まずは石崖に穴があるかどうか。もし穴があればその前に桑の木に似た樹木があるかどうか。その際、穴の中に巨大な毒蛇がおってこの樹を守っているようなら、それが目印じゃ」
この桑のような木の葉が、「咀頼羅」である。
しかし、これを近くまで行って採取しようとすると、守り神の巨大な毒蛇に害されてしまう。近づかずに採取する方法をとらねばならない。
そこでまず、
以大方箭射枝葉。
大方箭を以て枝葉を射る。
大きなやじりが四角になった矢をつがえて、その桑のような木に射かけねばならぬ。
この矢によって、
葉下。
葉下る。
葉が落ちる。
すると、
便有烏鳥銜之飛去、則衆箭射烏而取其葉也。
すなわち烏鳥のこれを銜(ふく)みて飛び去らんとするに、すなわち衆箭にて烏を射てその葉を取るなり。
カラスがこれを咥えて飛び去ろうとする。そこで何本もの矢を射かけてこのカラスを射落とし、その咥えている葉を取るのである。
・・・・那羅邇婆(ナーラージーバ)はこの二種の原料が無いと薬が作れないというので、崔敦礼はあちこちに使いを立ててこれらを入手しようとした。
しかし、これらを入手する前に、那羅邇婆は
死于長安。
長安に死す。
長安の都で死んでしまった。
ついで太宗皇帝も崩御されたので、これらのことは沙汰やみとなった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
段成式「酉陽雑俎」巻七より。こういうすごい薬があると仮病も通用しないかも。