平成23年10月21日(金)  目次へ  前回に戻る

 

夜の雨の中を帰ってきた。

休前日の夜はやることないので、おジャズを聴きながら、いにしえの詩集を開く。

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夢断神清寂寞時、  夢断じ神清くして寂寞の時、

颼颼凉雨灑松枝。  颼颼(しゅうしゅう)たる凉雨 松枝に灑(そそ)ぐ。

明朝也恐還多事。  明朝や恐るらくはまた多事ならん。

深夜挑灯写小詩。  深夜、灯に挑んで小詩を写しぬ。

 うとうとしていましたんじゃ。夜中に目がさめてしまい、何もすることがない。

 さらさらと寒そうな雨が、庭の松の枝に降り注いでいる。

 明日の朝になればまたいろいろ忙しくなるのだろうなあ・・・。

 夜更け、わしは再び眠りにつくことができず、灯りをともすと、今日読んで気に入った短い詩をメモしはじめたのだった。

まあこんな感じですわ。

この詩は万庵原資「深夜写詩」。万庵和尚は明暦二年(1656)生まれの江戸のひとで、「小文殊」と呼ばれた文人僧である。晩年「芙蓉軒」とも号す。元文四年(1739)示寂。

深夜、「小詩を写す」という詩を写しとっているわし。

三百年前の江戸の、おそらく初冬のころ、夜半の寝を覚ましてしまった万庵和尚はいったい誰の小詩を写していたのかな? 「画を見ている少女を描いた画を見ている少女を描いた画を見ている少女を描いた画」のように、何かしら永遠につながるような気がするのが、晩秋の夜である。

 古い木のしたには

 いいものが埋つてゐるんだと誰かがいふ。

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 ほう、ほう、ごろすけほう、

 ぽつりとまた雨になるのに、ほう、ほう。 (室生犀星「ふくろふ」)

 

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