平成23年5月18日(水)  目次へ  前回に戻る

 

花粉症類似の症状がもっとひどくなりましたので、今日は会社休んだ。しかし休むと会社が怒ってくるので、わたしの姿をした傀儡(人形)を送り込んでおきました。

ふふふ。会社のやつらめ、わたしの傀儡はわたし本体と同様、椅子に座ってじっとしており、少し怒鳴られると悲しそうな顔をするだけですから、わたしとの見分けなどつかないでしょう。わはは。これはサボりたい放題だ。明日も傀儡に行かせることにした。

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越州の武官であった柳崇は頭に腫物ができて苦しんでいた。

術士を呼んで観察せしめたところ、

「いますな」

という。

「なにが?」

と問うと、

「夜になったらもう少しはっきりいたしましょう」

と言うので、その晩は術士を柳の部屋に泊まらせた。

翌日、術士のいうことには、

有一婦女緑裙。問之不応。在君窗下。

一婦女、緑裙なる有り。これに問うも応ぜず。君の窗下にあり。

「おんなでござる。青いスカートをはいてござった。声をかけてみたが、言葉は語れぬようじゃ。部屋の、その窓のところにおられましょう」

そこで窓の下に行ってみると、

見一瓷妓女。極端正、緑瓷為飾。

一瓷妓女を見る。極めて端正にして緑瓷飾を為す。

一体の踊り子の陶人形が落ちていたのが見つかった。たいへんよくできており、青い色の染料で飾られていた。

「・・・・・・」

柳はまさかこの見覚えの無い人形が原因とは思わなかったが、術士に命じられるまま

於鉄臼擣砕而焚之。

鉄臼にて擣砕(とうさい)してこれを焚く。

鉄製の臼に入れて搗き砕き、さらにその破片を火にくべて燃やした。

すると、腫物はきれいに癒えた、ということである。

「それにしても誰があの人形をあすこに置いたものか、それがわからぬのだ」

と柳は今に至るも首をひねっている。

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唐・張鷟「朝野僉載」より(ただし本文は「太平広記」巻368所収に拠った)。

人形はかくのごとき悪さをすることもあるようです。しかしわたしの傀儡である。何もできるはずがない。本体のわしが何もできず、ついにかくのごとき老残の身となり果てた身の上なのだから。

 

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