平成22年6月25日(金) 目次へ 前回に戻る
じめじめするし、あたま痛いし、セ・リーグは↑3チームが↓3チームに勝つ、という「当たり前のこと」を今日も繰り返しただけだし、憂鬱な毎日をどうしようにもどうしようもなく、もうイヤである。
スカっとするコトバはないものか。
そこで、今日は「幽夢影」をごろごろ読んだ。
「尤物」(すぐれもの)について。
笋為蔬中尤物。
笋(しゅん)は蔬中の尤物たり。
タケノコは(蘇東坡らも言うているように)山菜の中のすぐれものだ。
荔枝為果中尤物。
荔枝(れいし)は果中の尤物たり。
ライチは(楊貴妃にも好まれたし)果物の中のすぐれものだ。
蟹為水族中尤物。
蟹は水族中の尤物たり。
カニは水中生物の中のすぐれものだ(旨い)。
酒為飲食中尤物。
酒は飲食中の尤物たり。
お酒は飲み食いするものの中のすぐれものだ。
月為天文中尤物。
月は天文中の尤物たり。
月は空にあるものの中のすぐれものだ(清く美しく詩の題材になる)。
西湖為山水中尤物。
西湖は山水中の尤物たり。
杭州・西湖こそ、山と水の風景中のすぐれものだ。
詞曲為文字中尤物。
詞曲は文字中の尤物たり。
(正統的な「文」や「詩」ではなく俗謡である)「詞」や「曲」こそ、文学の中のすぐれものだ。
まだまだいくらでも続けられそうですが、心斎先生・張潮が掲げたのはここまで。(172則)
「まだまだ続けられますなあ。たとえばにょにん中の尤物は西施・・・」
「いやいや楊玉環では・・・」
「英雄中の尤物は蜀先主・劉玄徳・・・」
「はあ? あんた蜀マニアか? 三国の英雄といえばその識見・度量・大略、どれをとっても曹孟徳であろう」
「詩人中の尤物は李太白・・・」
「はあ? あんたは依存症マニアか? 詩人といえば杜子美であろうが・・・」
「日本プロ野球史上最高打者といえばやっぱり王さんでしょう」
「はあ? あんたは昭和レトロか? イチローに決まっておろうに・・・」
「いやいや、前田智徳がどうとかこうとか・・・」
と実は「一番」はなかなかまとまらないものです。
「でも、これだけはまとまるでしょう」
と、張南村が評語を書き付けた。
幽夢影可為書中尤物。
「幽夢影」は書中の尤物たるべきなり。
この「幽夢影」の書は、書物の中のすぐれものですね。
「なるほど、それはそうですな」
と言いながら、陳鶴山が書き付けた。
此一則又為幽夢影中尤物。
この一則また「幽夢影」中の尤物たり。
この第172則こそ、「幽夢影」一篇219則中のすぐれものだろうね。
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いやいや、わしなどは173則の方を推しますが・・・。
買得一本好花、猶且愛護而憐惜之。矧其為解語花乎。
一本の好花を買い得ても、なおすらこれを愛護し憐れみ惜しむなり。いわんやその解語の花たるをや。
一本のよき花を買うたときですら、これをいとおしみいつくしみ悲しく思うのである。それが「コトバを解する花」だったらどうするのだね。
「解語の花」はご承知のとおり、佳人をいう。佳人は「飾り物」なら何と美しいことか。
周星遠、評して曰く、
自是君身有仙骨、世人那得知其故耶。
自ずからこれ、君の身に仙骨あるも、世人なんぞ得てその故を知らんや。
(この語を読むと)どうやらおまえさんには仙人になる根っこがあるようじゃが、世間のひとはそこのところをあまりよくわかっておらんようだね。
だそうです。むかし懐かし明清ロマンチシズムの香りがするねえ。