ハラ減ったにゃあ。
タケノコの季節ですね。タケノコ食べたい。
ところで、宋の釈・賛寧が「笋譜」を著わしてタケノコについての知識をまとめているのであるが、その中にタケノコの各種を紹介して、合わせて94種類を数えているところである。
ハラが減ってたまらんので、読んでみますと、例えば
○竹王林笋(ちくおうりんしゅん)
漢の武帝のときのこと、ある少女が湖南の勝水で洗濯をしていると竹の節が流れよってきた。少女がこれを押しやってもまた戻ってくる。不思議に思って手にしてみると、
聞有音声。持帰破之、得小児、男也。
音声あるを聞く。持して帰りてこれを破るに小児を得、男なり。
竹の中から何か音がするのである。そこで持って帰って割ってみたところ、小さな子供が現われた。男の子であった。
この子はすくすくと育ってあっという間に大きくなり、
及長、以竹為姓、立以為王。其竹棄之于野、化生成林。
長ずるに及んで竹を以て姓と為し、立ちて以て王と為る。その竹これを野に棄つるに、化して林を生成す。
大人になって「竹」を姓とし、王となった。彼がそこから生まれた竹は原野に棄てられたのだが、それも化して立派な竹林となった。
これが「竹王林タケノコ」である。
其笋密密冒土。南地熱、其笋多冬生。
その笋密密として土を冒す。南地熱なればその笋多く冬に生ず。
その竹林のタケノコは密生して地面いっぱいに広がった。南方の大地は熱を持っているから、このタケノコは(通常の四月ではなく)冬場に採れる。
流れきたモモから生まれたモモ太郎、タケから生まれたかぐや姫、鴨川で洗濯しているところへ流れ寄ってきた丹塗矢(にぬりのや)が姫神を身ごもらせる賀茂神社の神話などが思い出されます。つながっているのでしょうね。
○桃竹笋(とうちくしゅん)
湖南・涪陵に相思崖(そうしがい。「恋人岬」みたいな意味である)という岩壁があり、そこに生えるタケノコである。
伝説によりますと、
昔有童子在崖下吹竹。
昔、童子ありて崖下に在りて竹を吹く。
むかしむかし。一人の少年がこの岩の下で、いつも竹笛を吹いておりましたのじゃ。
神女見悦之、投以桃竹叉。童子報之以虡。
神女これを見て悦び、投ずるに桃竹釵(トウチクサ)を以てす。童子これに報ずるに虡(キョ)を以てせり。
「虡」(キョ)は説文によれば「古代の神獣である」ということですが、ここでは「簴」(キョ)と同じで、鐘や笛の竹製の「舌」。
岩の女妖精が少年を見て恋心を抱き、桃竹釵(モモとタケで作られたカンザシ)を投げ与えた。少年もまた女妖精にほのかな思いを抱いて、お返しに竹笛の舌を投げ返したという。
だからこの岩壁を「相思崖」(こいびと岩壁)と呼ぶのであるが、現在、
桃枝与竹皆生崖畔、其笋生亦柔弱有異。
桃枝と竹、みな崖畔に生じ、その笋生じてまた柔弱にして異あり。
桃の木と竹と、どちらもこの岩のほとりに盛んに生えている。この竹のタケノコもまた(恋人同士のように)ぐにゃぐにゃと軟らかいので有名である。
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ドイツ・ロマン派みたいな話になってまいりましたが、こんなのが94も続くので、飽きてきました。明日のシゴトのことを考えずに、毎晩毎晩こういうのを訳し続けるルーピーなミブンになりたいものですが、シモジモには許されることでないので、ここまでといたします。