困るワン。

 

平成21年 5月28日(木)  目次へ  昨日に戻る

@ある富豪、謀るところがあり、一人の男に言う、

「一千枚の銀貨をお前に与えるゆえ、

爾与我打死了罷。

爾、我がために打死せよ。

お前、わしのために死んでくれんか。」

そのひと、沈吟やや久しく、曰く、

只打半死、与我五百両如何。

ただ打半死、我に五百両を与うるは如何。

半分死にますので、わしに五百銀両をいただく、というわけにはいきますまいか。

 

Aあるひと、肖像画を描いてもらおうと画家に銀二分を支払った。

画家がやってきて難しい顔をしながらそのひとを前から見、横から見、後ろから見てスケッチし、

「完成品は後日お届けします」

と言うて帰って行った。

しばらく経つと、約束どおり、絵が送られてきた。

「どれどれ」

とできばえを見てみると、

画出一背像。

一背像を画き出したり。

ひとりのニンゲンの背後から見た姿が描かれていた。

年恰好から見て、どうやら自分のようである。

そのひと怒りて画家に、

「これはどういうことか。こういう肖像画があるものか」

と怒鳴り込むと、画家曰く、

我勧爾莫把面孔見人罷。

我は勧む、爾、面孔を把して人を見る莫きことを。

「わたくし、あなたさまのお姿を後世に遺すには、お顔をお見せにならない方がよかろうと思ったのでございます」

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いずれも清・乾隆のひととのみ伝わる遊戯主人「笑林広記」巻九による。なお、Aの「銀二分」というのは、画の礼金としてはおそらく相場より安いのである。

 

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