ネズミこわい。

 

平成21年 4月16日(木)  目次へ  昨日に戻る

あといちにち・・・。・・・これがまた長い・・・。まあ宮仕えもあと数ヶ月だからがまんするか・・・

というような「本当に言いたいこと」はさておきまして、今日の論題は、

●魚の頭を不用意に棄ててはいかん。

ということであります。

建康の街に住むあるひと、魚を食って、頭を庭に棄てた。

俄而壁下地穴中有人乗馬、鎧甲分明。

俄にして壁下の地穴中に人の馬に乗る有り、鎧甲分明なり。

突然、壁の下の地面の穴から馬に乗った武士が出てきた。はっきりとよろいとかぶとをつけているのが見てとれた。

ただし、

人不盈尺。

人尺に盈(み)たず。

その武士は、背の丈一尺に満たなかった。

このころ(唐末〜五代)の一尺は31センチ程度といわれます。

ちなみにこの武士は馬上にあって、

手執長槊。

手に長槊を執る。

手には長いホコを持っていた。

その槊(サク。ほこ)で、

刺魚頭、馳入穴去。

魚頭を刺し、馳せて穴に入りて去る。

棄てられている魚の頭を刺し、そのままホコを担いで穴の中に入って消えてしまったのである。

――な、なんだね、今のは・・・。

一度目はさすがに夢かまぼろしかと思ったのだが、その後も魚の頭を庭に棄てるたびに、二度、三度と同じことが起こったので、そのひと、ついに

掘地求之。

地を掘ってこれを求む。

地を掘ってその正体を探索してみた。

壁の下の穴に沿って掘っていくと、

見数大鼠、魚頭在焉。惟有筯一隻。

数大鼠と魚頭在るを見る。筯(ちょ)一隻有るのみ。

大ネズミ数匹と魚の頭が出てきた。その近くには、箸が一本あるばかりであった。

「筯」(チョ)は「箸」。「一隻」は、二つで一そろえのものが一つだけ(すなわち一そろえの半分)あること。

箸一本が「槊」(ほこ)だったのではないか。だとすると、この大ネズミが「武士」だったのか。

しかし、

了不見甲馬之状。

了として甲馬の状を見ず。

どこにもかぶとや馬の姿をしていたものは見えなかった。

ので、ネズミが馬で、本体は別にあったのかも知れない。

不思議なことではあったが、

無何、其人卒。

いくばくも無くしてその人卒す。

それほど間を置かぬうちに、そのひとは亡くなった。

ので、悪い兆しであったことは確かなのである。

ああ、魚の頭さえ棄てなければ、このような兆しを見ることも無かったであろうに。

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五代〜宋、徐鼎臣「稽神録」巻二より。かぼちゃが馬車になる世の中だ、魚の頭も何かになるのでしょう。

 

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