令和2年7月2日(木)  目次へ  前回に戻る

コロナの間は家飲みでも仕方がないでぶー。

都内新規感染者久しぶりで100人超。感染経路とか見ていくとまだそんな脅威ではないみたいですが、しかし夜の町で酔っ払うとマスク無しで議論したりするので危険です。酔っ払わない方がいいですよ。

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明の時代、嘉靖(1522〜66)、劉慶(1567〜72)の二代に仕えて名相の誉のあった文貞公・徐階さまが、官を辞して郷里の浙江・華亭に帰ったときのこと、

徧召親故。

親故を徧召せり。

親類や昔からの知り合いを広く招いて宴会を催した。

その席上、

一人取席間金杯蔵之帽。公適見之。

一人、席間の金杯を取りてこれを帽に蔵す。公、たまたまこれを見たり。

あるひとが、宴席に出されていた黄金の盃を摘まみあげ、周りを見回して、そっと自分の帽子の中に入れてしまった。徐階は、たまたまそれを見ていたのである。

(あいつは誰だっけ・・・)

と思い出さないと思い出せないような遠縁の誰かであったが、こんなに落ちぶれていたとは・・・。彼をとりあえずAさんとしておきます。

やがて、

席将罷、主者検器、亡其一。亟索之。

席まさに罷まんとして、主者器を検するに、その一亡し。亟(すみや)かにこれを索む。

宴会が終わりかけ、宴会係の主任が食器をしまい込み出したとき、黄金の杯が一個無いことに気づいた。「どこに行ったのであろうか」と、すぐにこれを探しはじめた。

「待て待て」

徐階さまは酔っぱらったふうをして、言った。

杯在。勿覓。

杯在り。覓(もと)むるなかれ。

「さかずきは、ある。探さんで、よい・・・ではないか、わははは」

ところがその時、Aさんは、

酒酣潦倒、杯帽倶堕。

酒酣(たけな)わにして潦倒(ろうとう)し、杯帽ともに堕ちたり。

完全に酔っ払ってしまっていて、足元がふらつき、頭から帽子がずり落ちて、さらに黄金の杯もごろんと落ちてしまった。

(・・・・!)

公亟転背、命人仍置其帽中。

公すみやかに背を転じ、人に命じてかさねてその帽中に置かしむ。

徐公はすぐにくるりと背なかを向けて、(見なかったことにして)手真似で宴席の世話係の者に命じて、杯をもう一度帽子の中に入れてやった。

・・・のだそうでございます。

なるほどなあ。

只此一端、想見前輩之厚。

ただこの一端にして、前輩の厚なるを想見せん。

このわずかな行為だけをみても、昔のひとたちの人柄に如何に厚みがあったか、思い知ることができるであろう。

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明・焦g「玉堂叢語」巻五より。いいハナシ(「嘉話」)なのですが、徐階さまはわたしどもとは違う世界のニンゲンのように思われ、Aさんか、あるいは手真似で杯と帽子を拾うよう命じられてあたふたしている宴席係の者、の方に感情移入してしまいます。

(何か拾え? これ? 帽子と? こっちもですか? こっちは宴会主任に・・・え? 違う? 「おまえはあほか?」って? 帽子に入れる? え? これだとネコババさせてしまいますよ! 「このあほう!」 ? ? ? ・・・あーあ、なんでおれはいつも怒られてばかりなんだろうか、おれはダメだなあ・・・。)

みたいな感じで、われらは常に、物事の全体像を知ることも知ろうとすることもなく、右往左往して叱られて、委縮して頭を垂れて生きてきた、その仲間がここにいるのだ、という感じがします。

 

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