ヨウスコウワニ(想像図)。
明日はまた月曜日か・・・。
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熊本はまだまだたいへんみたいだし、ここは景気のいい話でもして寝ることにします。
春秋・斉の景公(在位前547〜前490)が河南の沅江を渡ろうとしたときのこと、公の乗る馬車の左側の馬を、何物かが川の中に引きずり込んだ。
「な、なにものだッ」
「公はご無事か!」
と、
衆皆驚、。
衆みな驚き、(おそ)る。
供の者たちはみな大いに驚き、パニック状態に陥った。
そのとき、勇士・古冶子(こやし)は、
抜剣従之。
剣を抜きてこれに従う。
剣を抜いて手に持つと、引きずり込まれた馬を追って「どぶん」と川に飛び込んだ。
そして、
邪行五里、逆行三里、至于砥柱之下、殺之。
邪行すること五里、逆行すること三里、砥柱の下に至りてこれを殺す。
斜めに行くこと約2キロ、さかのぼること1.2キロ、三門峡のあたりで追いついて、それを殺したのであった。
殺したものをよくよく見ると、
乃黿也。
すなわち黿(げん)なり。
それは、ヨウスコウワニであった。
古冶子は、
左手持黿頭、右手挟左驂、燕躍鵠踊而出。
左手に黿頭を持し、右手に左驂(さ・しん)を挟み、燕躍し鵠踊して出でたり。
左手に切り落としたヨウスコウワニの首を持ち、右手にはちょっと食われた公の馬車の馬を抱えて、燕のように軽やかに、白鳥のように優雅に、水中から飛び出してきたのであった。
そして
仰天大呼。
天を仰いで大いに呼ばう。
天を見あげて、大声で叫び声をあげた。
勝鬨を上げたのだ。
その勢いすさまじく、
水為逆流三百歩、観者皆以為河伯也。
水、ために逆流すること三百歩、観る者みな以て河伯ならんとせり。
このため水は三百メートルぐらいごうごうと逆流し、様子を見ていたひとびとはみな、「川の神さまが出てきたのだ」と思ったそうである。
すばらしい。
景気いいですね。
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晋・干宝「捜神記」より。
実は、歴史的事実としては斉の景公が河南の沅江のほとりまで行ったことは無いんだそうで、これはフィクションなんだそうです。がっかり。