今日は二次会を断って帰ってきてしまった。明日からの人間関係さらにつらい。しかしそんな小さなことに悩んでいるうちに・・・。
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南宋のころ。
葉元浣という士人があった。宰相の親戚という名門の出て、恵州の判官をしていた。
葉家は子どもたちが幼いので、乳母を一人雇っていたが、この乳母が
出外門与児戯。
外門を出でて児と戯る。
門の外で子どもたちと遊んでいたときのことである。
見一朱衣人、持杖量地。
一朱衣人の、杖を持して地を量るを見る。
赤い服を着た人が、杖を手にして地面を測量しているのを見かけた。
何をやっているのであろうか。
子どもたちも不思議に思ったのであろう、遊ぶのを止めてその人をじっと見ていたが、その人はまわりの人の視線など気にならないようで、一心に作業を続けながら、
適至其側。
たまたまその側に至る。
だんだんと、子どもたちのすぐ傍まで来た。
どすん。
子どもたちの一人にぶつかった。
「うわあん」
「おお、悪い悪い」
その人はようやく子どもたちに気が付いて謝った。
「ごめんな。お詫びに・・・」
引手画之、曰、到此佳。
手を引きてこれを画し、曰く「ここに到りて佳なり」と。
手に持った杖で地面に線を引き、
「ここまで来たらいいことにしておこう」
と言った。
そしてどこかへ行ってしまった。
見たことも無いひとである。
乳母と子どもたちは家に帰ると、家人たちに今日見た事件の話をした。
葉判官もそれを聞きつけて、官吏たちに
「今日、誰か測量を行った者がいるのかな」
と問うたが、誰一人心当たりのある者はいなかった。
―――翌日。
城中火、延焼屋廬甚多。
城中火あり、屋廬を延焼すること甚だ多し。
恵州の町で火事が起こり、大きなも小さな家も、延焼してたいへん多く焼けた。
葉家も大急ぎで避難したが、火は次々と類焼してきて
及判庁前而止。
判庁の前に及びて止まる。
判官の家の前、ちょうど前日に見知らぬ男が線を引いたところまで来て、止まった。
かくして葉家は火災を免れたのである。
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宋・闕名氏「異聞総録」巻二より。
北からか西からか富士山からか知らんけどそろそろでかい災い来るかな? ギリギリ災難を免れたいところだが、如何であろうか。