沖縄にもPM2.5がだいぶん来ました。眼やのどが痛いレベル。しかし○縄タイムスによれば「チュウゴク由来のものとは断言できない」そうですよ。(笑)
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南宋の時代のことでございます。
余干(江西・鄱陽の南にある県)の町から北へ官道を進んで行くと「史家塘」と呼ばれるため池がある。
決して大きな池ではないが、
緑水澄清、過客多賞恋、勿忍去。
緑水澄清にして、過客多く賞恋して去るに忍びず。
碧く清らかな水が溜まっていて、官道を行く旅びとたち、多くはこれをほめたたえ、行き過ぎるのを残念に思うほどであった。
さて、ある夏の日のこと、
一官人携妻奴来、留止甚久。
一官人の妻奴を携え来たり、留止すること甚だ久し。
あるお役人が家族や下男下女を引き連れてこの場で休憩し、ずいぶん長い間とどまっていた。
その一行の中に女の子あり、
為人軽浮。
人となり軽浮。
ちょっとお調子もので、深い慎みがない性格であった。
この子が、ちょうど暑いさかりのこととて、不作法にも
即脱履襪、下濯足。
即ち履襪を脱ぎ、下して足を濯(あら)う。
くつと靴下を脱ぎ棄てて、裸足を水の中に入れて戯れていた。
と―――真昼間に、何人もの同行者が見たのである。
為物従水内挽以入。
物の水内より挽きて以て入るるところと為る。
池の中から何物かの手が伸びて、女の子の足を摑むと、するりと彼女を水中に引き入れたのを。
あ、という間の出来事であった。
女の子は
「た、たすけ・・・」
と口にして両手を空に伸ばしたが、恐怖で見開いた目もそのままに水中に没してしまった。
ひとびと、
不知所為。
為すところを知らず。
どうしていいかわからないうちのできごとであった。
報せを受けてすぐに主人が飛んできたが
望之不見。
これを望めども見えず。
池を見渡してみてもどこにも女の子のかげもかたちも無い。
若い衆らが潜ってみようかと申し出たが、主人はそれを押しとどめ、
旋即農家仮水車。
旋(ただ)ちに農家に即(つ)きて水車を仮(か)る。
すぐに近所の農家から足踏み式の水車を借りて来させた。
それを使って、人を雇い水が涸れるまで掻き出させたが、底が見えても結局、死体はおろか
不得踪跡。
踪跡を得ず。
何の手がかりも見つからなかった。
ということである。
コワいことじゃのう。
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宋・洪容斎「夷堅志」巻三十四より。
というふうに、チュウゴクにはあちこちに妖魔が潜んでいるのでございます。チュウゴクから流れてくる大気中にも、いくらでも妖魔が混ざっているのでございましょう。