行政法15(19.7.23)
行政作用法各論D
行政行為(5)
6行政行為の瑕疵(続き)
⑷ 違法性の承継
当該行政行為でなく、これに先行する行政行為の瑕疵を当該行政行為の瑕疵として主張することができるか。(不可争力と関連)
行政行為に基づく法律関係は行政の安定的な活動のためには早期に確定させる必要がある。したがって、原則として先行行為の瑕疵は後行行為の効力に影響を及ぼさない。「瑕疵は承継されない」
ただし、先行の行為が後行の行為の準備に過ぎないと考えられる場合には、違法性が承継される。
○ 承継が認められる場合
・農地買収計画と買収
・土地収用法による事業認定と収用委員会の収用裁決
○関連はあるが、別個の目的があり、手段と目的ではない、と考えられる場合は違法性は承継されない。
・租税の賦課処分(税額確定)と、その滞納処分(最初の賦課が間違っていても、きちんと取り消さないと滞納処分は有効になる)
☆ 先行行為が無効な行政行為であれば、後行行為もそもそもの根拠がなくなり、取消あるいは無効が主張できると解される。
⑸ 行政行為の瑕疵の「治癒」
瑕疵ある行政行為は法治行政の原理から考えて取消されるべきである。しかし、その瑕疵が後日の事情の変化によって瑕疵として非難するに足らなくなった場合、一度取消してまた行政行為をしなおすのは行政経済上好ましくない。このような場合、行政行為を適法なものとして扱うことがある。
@「瑕疵が治癒された」場合
瑕疵があったが、その後の事情の変化で瑕疵と認める必要がなくなったもの。
・招集手続に瑕疵(三日前の公示を前日になど)ある会議に、委員全員が出席した場合
・農地買収計画に関する訴願の裁決が出る前に買収処分をしてしまったが、後に裁決が棄却された場合(最高裁昭和36年7月14日判決)
A 違法な行政行為が「転換された」場合
違法で取消または無効とされるべき行政行為について、これを別の行政行為に転換した場合、適法となる場合に、この適法な行政行為とみなして有効にすること。(一度取消してやり直す手間を省く)
0) 既に死んだひとあてに農地買収処分がなされ、その買収令書(書面主義)が相続人に手渡されていた場合、その相続人に処分がなされたものとみなして有効とする。
⑹ 手続規定の重視
「瑕疵の治癒」は行政経済という観点から認められてきたものであるが、たとえ結果は同じになると行政側が主張しても、「公正な手続きで処分される権利」を重視して、瑕疵ある行政行為は一度取消し、改めて手続きを行うことが必要であるという考えもある。(最高裁昭和47年12月5日判決)
7 行政行為の取消と撤回
行政行為は、権限ある機関によって取消されないと公定力によって有効なまま。期限の到来、条件の成就、義務の履行その他によって効力が消滅するまでは存続し、関係者を拘束する。
しかし行政庁が行政行為を行うのは公益のためであり、公益のために適当でないという状態になったら、この存続効を否定、すなわち効力を消滅させることが求められる。
権限ある機関
@)裁判所・・・行政事件訴訟法・・・違法な行為の取消
A)行政庁(審査庁)・・・違法・不当な行為の争訟取消(職権での取消は明文のある場合)
B 行政庁(処分庁)・・・違法・不当な行為の争訟取消のほか、職権での取消・撤回
⑴ 瑕疵ある行政行為の職権取消し
行政行為が成立当初から瑕疵を有している場合、行政行為を行った処分庁が取り消しの意思表示を行い、はじめからなかったことにする。この行為を「行政行為の職権取消」という。
@取消の制限
常識的に考えると、瑕疵ある行政行為は取り消すのが正しいことのように思える。
しかし、
・授益的な行政行為(生活保護の決定)や
・相手方には侵害的であるが第三者に授益的な行政行為(農地買収→小作人に転売)
の場合には、行政庁が誤ってした行為を任意に取消すと、相手方や第三者の法的地位を不安定化する。その者に帰責事由がないかぎり権利をみだりに奪ってはいけない。このように授益的な行政行為(第三者の利益を含む)については公益上の特段の必要がなければ認められるべきではないとされる。→侵害的行為であれば取消しは可能(取消自由の原則の適用)、ただし授益的行為については取消しが制限されると考えられる。
A遡及の制限
行政行為の取消は、はじめにさかのぼってなかったことにする→遡及効。(しかし公益のため授益的行為を取消したとき、相手方の権利を侵害することになることから、遡及効を否定すべきときもあると考えられる。)
⑵ 行政行為の職権による撤回
瑕疵なく成立した行政行為について、その後の事情変化を理由として、存続効を否定する、すなわち失効させること。講学上の用語として「撤回」という(瑕疵の治癒、の逆)。(ただし法文では「取消」と表記しているのが通常)
@ 撤回の制限
取消同様、侵害的行為の撤回は可能(撤回自由の原則)、授益的行為の撤回については、相手方の帰責とか公益上の要請を考慮して認められる場合しかできない、と解される。ただし、法律に根拠があればそれによる。
逆に、法律に根拠がなければ授益的行為については撤回できない、とする学説もあるが、公益上の必要があればできると解すべき。(菊田医師事件:最高裁昭和63年6月17日判決)
A 授益的行政行為の撤回の際の手続き→行政手続法(許認可等を取消す不利益処分をしようとするとき)の聴聞手続
B 損失補償
撤回によって相手方に損失を生じた場合(たとえば公園の占用許可の撤回によって建物の除去等をした場合)、補償が求められることがある。明文で規定している場合(国有財産法19条、普通財産の場合は契約方式)はもちろん、規定がなくても補償が認められる。(東京中央卸売市場開発事件:最高裁昭和49年2月5日判決)
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